山口組分裂で、ついに殺し合いが始まった。10月6日正午過ぎ、長野県飯田市のホテル前で暴力団関係者の男性が頭部を拳銃で撃たれ殺害される事件が発生、山口組系傘下団体の幹部が逮捕された。男性は新組織・神戸山口組へ移籍しようとしており、トラブルになったという。本格的な抗争勃発に備え緊張が高まるなか、溝口敦氏(ノンフィクション作家)と鈴木智彦氏(フリーライター)、当代ヤクザライターの2トップが緊急対談した。

──今回の射殺事件から本格的な抗争に発展する可能性はあるのか?

溝口:今回の件では、ないと思います。殺したのは同じ組の兄貴分だそうですが、神戸山口組の見解は、移籍が完了していたわけではないから、六代目山口組系の組織内での“内紛”であるということで、神戸側が報復することは考えられない。

男性が銃で撃たれたとみられる温泉施設の駐車場を調べる捜査員
=10月6日、長野県飯田市
男性が銃で撃たれたとみられる温泉施設の駐車場を調べる捜査員 =10月6日、長野県飯田市
鈴木:殺しにまでなったのだから、実際には神戸側と盃を交わすなどの重大なアクションがあったはずですが、今回の事件はあまりにも偶発的すぎるので、双方ともここから火がついたらまずいと思っているはず。ただ、偶発的にせよこういう事件が起きるのは、マスコミの騒ぎが沈静化して年をまたいでからと思っていたから、案外早く起きたなという印象です。

溝口:当面、お互いのシノギを侵食し合う「経済戦争」が起きて、その後に暴力による抗争になるはず。半年もすれば、何件か事件が起きるでしょう。

鈴木:よく「抗争になりますか?」と聞かれるんですが、今回のことで抗争にならなかったら、もう暴力団じゃないっていうくらい、あり得ない事態ですから。

──二人にとっても分裂は想定外の事態だった?

溝口:私は昨年6月の時点で、直系組長のひとりから「我々は立ち上がります」と聞いていましたから。ただその時点では、分裂しようとしても途中で圧殺されるんじゃないかと危惧していましたが、分裂する今年8月末に近づくにつれて詳細な情報が入ってきて、「ああ、やったのか」と。

鈴木:私は対立については聞いてたけど、本当に分裂すると思ってなかったからびっくりしました。山一抗争(*注)を見ても分かるように、分裂する側にはリスクしかないですから。

【*注:1984年に竹中正久組長が四代目を襲名したことに反発した反竹中派が「一和会」を結成。竹中組長は一和会に殺害されたが、山口組の報復が激化。1989年の終結までに双方で25人もの死者を出した】

溝口:分裂に踏み切れた要因は、司忍組長と竹内照明若頭補佐(司組長の出身母体である弘道会会長)が情報を把握してなかったか、あるいは軽く考えていたことで六代目側が対策を取れなかったことでしょう。それには、高山清司若頭の不在が大きい。

 高山若頭が4000万円の恐喝事件で有罪となり上告を取り下げたのが去年の5月で、収監されたのが6月。分裂計画はその時期にスタートしています。神戸側は関係ないというでしょうが、時期的に符合するのは間違いない。

鈴木:驚いたのは、山健組だけでなく宅見組までが参加したこと。どちらも山口組を代表する組織です。山健や宅見は、芸能人とのゴルフコンペ出席で後藤忠政組長が処分され(後に引退)、クーデターの芽が生じた2008年に、離反組を徹底的に潰した側だから、六代目もまさか出て行くわけがないとタカをくくっていたんじゃないでしょうか。

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