渡辺龍太(フリーニュースディレクター)

 今年の9月に成立した安全保障関連法に関する報道で、護憲派メディアは真骨頂を発揮し、やれ『戦争法案だ!』とか、はたまた『徴兵制になる!』と大騒ぎしていました。そういった、政治に関して無知な読者・視聴者を、過剰に感情的にあおる様な報道に対し、強い疑問を持った人も多くいた事でしょう。中には、日本中の護憲派メディアは連携し、安保関連法を潰そうという意思を持っていた様にすら感じた人もいるかもしれません。しかし、本当はそうではなく、マスコミは政治の事には関心がなく、商売繁盛を願っているだけなのです。

 さて、新聞やテレビというと、権力を監視するための正義の味方というイメージを持っている人が多いかもしれません。確かに、私もニュース番組制作の仕事をする以前は、メディアの存在の第一目的は、『多くの人々が知るべき事の真実を伝える』という事だと思っていました。しかし、実際に現場で働き始めて、そうではない事に気付きました。結局は、メディアも商売なんです。だから、一番大事なのは、『売上拡大』なのです。シンプルに言えば、メディアというのは、1人でも多くの顧客(視聴者・読者)が関心を持つ記事や番組を作り、それで売上を1円でも多くあげるという事をひたすら熱心に行っているだけの集団なのです。では、なぜ安保関連法を『戦争法案だ!』と大騒ぎする事が、メディアの商売繁盛につながるのでしょうか。その理由は安保関連法が多くの人にとって理解するには複雑すぎる内容で、かつ、読者・視聴者を感情的にあおる演出を加えやすく、簡単に多くの人に関心を持ってもらえる記事や番組を作りやすいトピックだからです。

 実は、人は自分の良く知らない事に対して、積極的に理解しようという意欲を持っていません。そして、そういう自分の理解できない事を、感情的にだけ理解させてくれるコンテンツに、非常に強い興味を持つ性質があります。例えば、肩こりの湿布のテレビCMで『インドメタシン配合』と言われて、どれだけの人がネットでインドメタシンについて調べるでしょうか。おそらく、ほとんどの人は良くわからないまま、きっと肩こりに効く成分なんだろうと受け入れると思います。そして、CMに登場する今まで肩こりで暗い顔をしていた人が、肩に湿布を貼って『インドメタシンだから効果抜群!』と急にニコニコと元気になってしまうのを見たらどうでしょう。きっと、薬品や化学に対する知識がない人ほど、『インドメタシンっていう、肩こりに効くすごい成分があるらしい!』とワクワクして熱狂的に湿布の購買意欲がそそられるはずです。