上念司(経済評論家)

 増税による景気の悪化で安倍政権は終わる。それを一番喜ぶのは誰だろう?財務省はそんなに習近平を喜ばせたいのか?

 いま、日本の景気が絶好調なら私も増税に賛成する。しかし、直近の2四半期の経済成長率はまさかのマイナスだった。2014年の3月ごろまでは絶好調だったアベノミクスは、消費税以降元気がない。それを物語るグラフがある。

 これは内閣府が発表しているGDPギャップ(需給ギャップ)の推移を示すグラフである。GDPギャップは、一国の経済における総需要と総供給の差を表している。GDPギャップがマイナスということは、需要が不足して供給力が余っている状態を表している。供給力が余るというのは、具体的に言えば、製造設備の稼働は不十分で、働ける人が全員働けない状態ということだ。

 2012年末に安倍政権が成立して以降、GDPギャップは順調に解消されるかに見えた。ところが、本来アベノミクスのメニューになかった増税が強行された。そして、このグラフを見れば明らかなとおり2014年第2四半期(4~6月)からGDPギャップは再びマイナス転換し、その幅を拡大させた。

 2014年4月からいったい何が起こったのか?考えるまでもない、消費税の8%への増税だ。そして、それが日本経済にはっきりとした悪影響を与えたのだ。

 増税によってマイナス転換したGDPギャップはその後も底這い状態を続けている。今年の6月現在でGDPギャップは-1.7%であり、名目価値に換算すると約9兆円のマイナスだ。

 税率を上げても税収が増えるとは限らない。もし、税率さえ上げればたちどころに税収が増えるのであれば、消費税を100%にして完全なる財政再建を目指せばいい。しかし、そんなことをすれば、人々は消費を抑制し、景気が悪化することで税収は減る。実際に、消費税の増税によって、GDPギャップをマイナスにする効果を持つことは十分に証明されているではないか。

 例えば、缶ジュースが100円で売られているとしよう。買い手は、売値の100円よりも高い105円の価値が缶ジュースにあると思っている。105円の価値があるジュースを、いま100円で買えると思っているからこそ、お金を使うわけだ。

 ところが、ある時政府が缶ジュースに10%の税金をかけた。そうすると売値は110円になってしまう。これは、缶ジュースに105円の価値があると持っていた人にとって、お得感を消して余りある値上げとなる。結局この人は缶ジュースを買わない。そして、缶ジュースが売れないことで、政府はアテにしていた税収も得られなくなる。結局、国民にとっても政府にとっても望まない結果となってしまった。

 昨年の消費税増税においてはまさにこれが起こった。もし、2012年からのアベノミクスの蓄積がなかったら、1997年と同じように税収はマイナスになっていただろう。逆にいえば、消費税増税をしなければ、もっと大きな税収増を期待できたはずだった。

 歴史上、増税によって財政再建を成し遂げた国はない。安定財源とは経済成長である。最も優先されるべきは、長期停滞からの脱出である。それを期待するからこそ、日本人の多くは安倍政権を支持した。平和安全保障関連法案をめぐる、マスコミの執拗な偏向報道にもめげず、支持率が回復しているのはひとえに経済に対する期待である。それは、野党には経済政策で全く期待が持てないということの裏返しでもある。だからこそ、安倍政権は日本経済の復活に全力を挙げるべきだ。少なくとも、GDPギャップを縮小傾向に持っていき、安定的にプラスに転換するまで、増税は凍結しなければならない。

 そして、直近やるべきことは、むしろ増税とは正反対の政策であり、具体的には大規模な補正予算である。財政政策の失敗によって開いたGDPギャップは財政政策によって穴埋めするしかないのだ。

 しかし、現在検討されている補正予算はその規模が3兆円と極めてショボい。6月現在、内閣府が発表したGDPギャップは約9兆円であり、それに比べるとたった3分の1の規模しかない。これではまったくもって不十分である。最低でも10兆円程度の大型補正予算を組むべきだ。