「公明新聞」2015年11月29日付紙面より)

 消費税の軽減税率に関し、制度設計をめぐる与党協議が続いています。このうち、事業者の納税事務について26日、軽減税率がスタートする2017年4月から当面実施する「簡素な経理方式」で大筋合意しました。その内容を解説します。

<免税制度は維持>

 大筋合意の内容は、現行の納税方法を維持し、変更点を極力少なくする形で標準税率と軽減税率で複数になる税率に対応できるようにするのが基本的な考え方です。従って、全国約800万ある事業者のうち約500万を占める課税売上高1000万円以下の事業者の納税義務を免除する制度も存続となり、実際に納税事務を行うのは残り約300万事業者となる見通しです。

<区分経理>

 消費税の納税額算出のイメージ現在、納税事業者は「客から受け取った消費税額(売上税額)」から「仕入れ先に支払った消費税額(仕入税額)」を差し引いて税金を国に納めています(仕入税額控除)。その際には、売上額や仕入額が分かる帳簿とともに、仕入れ先が発行した請求書や領収書などの書類を保存し、税務署から照会があった際には提示することで正確を期します。こうした納税方法を「請求書等保存方式」と言い、軽減税率導入後も当面、この方式が継続されます。

 ただ、税率が複数になることへの対応は必要です。現状の単一税率では、売り上げにかかる消費税の総額から仕入れにかかる消費税の総額を差し引いて納税額を算出しますが、軽減税率が導入された際には、日常的に帳簿や請求書の軽減税率対象項目に印を付けるなどして、標準税率対象と区分した上で納税額を計算することになります【図参照】。

<中小事業者への特例>

軽減税率の与党協議に臨む(左から)公明党の斉藤税調会長、自民党の宮沢税調会長ら=11月11日午前、国会
 こうした税率ごとの区分は、中小事業者で難しいケースも想定されます。そこで、課税売上高5000万円以下(1000万円超)の事業者の場合は、売上総額の一定割合を軽減税率対象の売り上げとみなして納税額を計算する「みなし課税方式」を選択できるようにします。

 その際に用いる軽減税率対象の売上割合は、(1)仕入れ総額に占める軽減税率対象の割合(2)通常の連続10営業日の総売上高に占める軽減税率対象の割合―のいずれかを用いるとし、(1)や(2)を算出できない場合は売上高の半分を軽減税率対象とみなします。

 また、仕入税額の算出では、課税売上高5000万円以下(1000万円超)の事業者について、売上額の一定割合(みなし仕入れ率)を仕入額とみなして簡単に計算する簡易課税制度を引き続き適用できます。
※「簡素な経理方式」は軽減税率導入から当面の経過措置として実施され、最終的には納税額を正確に計算するためのインボイス(消費税額などが示された納品書)制度が導入されます。