高橋洋一(嘉悦大学教授)



 今年は、かつて国民的な大議論を巻き起こした末に郵政民営化が決定されてから10年という節目の年にあたる。小泉純一郎首相(当時)の強力なリーダーシップの下、2005年に郵政民営化法が成立してからというもの、その後の政権交代によって度重なる方針転換を余儀なくされてきた日本郵政グループは今年、その将来を左右しかねない重要な局面を迎えた。日本郵政グループ3社の「上場」である。

 日本郵政グループは、従業員数約22万人、総資産約300兆円、連結売上高14兆円強を誇っており、日本のみならず、世界でも最大級の企業グループのひとつである。売出総額は1兆4000億円にも上り、1987年のNTT、1998年のNTTドコモ以来の大型上場となる。

 金融・証券各社はここぞとばかりに鳴り物入りで顧客獲得競争に熱心である。今のところ、ご祝儀相場が続いている。幹事証券に入れてもらった証券会社の「必死の営業努力」のたまものである。

 ただ、郵政グループの株は、長期的に見て「買い」なのかといえば、筆者の答は「否」である。

 そもそも小泉政権時に決定された当初の民営化法では、持株会社の下に郵便、郵便局、銀行、保険という事業形態の異なる4社が位置づけられており、銀行、保険の金融2社については、政府が株式を100%売却する「完全民営化」が想定されていた。
 しかし、その後の紆余曲折により、民営化のプロセスは著しい劣化を遂げることになる。決定的なのは、民主党政権時代に、ゆうちょ銀行とかんぽ生命の株式を政府が持ち続けるという、異常な事態を迎えることになってしまった。2012年の民営化法の改正で郵政民営化は「改悪」され、政府が一定の支配力を維持し続ける「不完全民営化」になり下がってしまったのだ。

 さらに、不完全民営化と相まって、日本郵政グループの収益基盤はあまりにも脆弱すぎる。かんぽ生命、日本郵便、最後に、郵政グループの屋台骨をささえるゆうちょ銀行をみてみよう。

 まず、かんぽ生命。かんぽ生命の主力商品と言えば、養老保険と学資保険である。これらは保障性と貯蓄性を併せ持つ商品と言われているわけだが、むしろ期間が経過するにつれて、保障性がどんどん低下していく商品と言ったほうがより正しい言い方になるだろう。言わば、投資信託に若干の保険を付与したような商品性を持っていることから、「保険という薄皮で公社債投資信託を包んだ商品」と揶揄されることもあるほどだ。