吉崎達彦(双日総合研究所チーフエコノミスト)

 先週、「13日の金曜日」のパリ同時テロ事件は衝撃的でした。また今週はG20(アンタルヤ)、APEC(マニラ)、ASEAN関連会議(クアラルンプル)という3つの首脳会議が行われています。本来はこれらの海外情勢を取り上げるべきなのでしょうが、あまりにも「現在進行形」に過ぎるので、本誌としては次の機会を待つことといたします。

 代わりに取り上げるのは、「新語・流行語大賞」にかこつけた2015年日本経済の回顧です。来年の予測を立てる際に、本誌が毎年欠かさないプロセスのひとつです。

2015年の新語・流行語は?


 いわゆる流行語大賞とは、正確には「ユーキャン新語・流行語大賞」を指す[1]。今年は既にノミネート語が以下の通り公表されていて、大賞とトップテンは12月1日に発表される予定。12月12日に発表される「今年の漢字」と併せて、これらが発表されると「いよいよ今年も残るところあとわずか」と感じるのが毎年の恒例行事となっている。

爆買い/インバウンド/刀剣女子/ラブライバー/アゴクイ/ドラゲナイ/プロ彼女/ラッスンゴレライ/あったかいんだからぁ/はい、論破!/安心して下さい、穿いてますよ。/福山ロス(ましゃロス)/まいにち、修造!/火花/結果にコミットする/五郎丸ポーズ/トリプルスリー/1億総活躍社会/エンブレム/上級国民/白紙撤回/I AM KENJI/ I am not ABE/粛々と/切れ目のない対応/存立危機事態/駆けつけ警護/国民の理解が深まっていない/レッテル貼り/テロに屈しない/早く質問しろよ/アベ政治を許さない/戦争法案/自民党、感じ悪いよね/シールズ(SEALDs)/とりま、廃案/大阪都構想/マイナンバー/下流老人/チャレンジ/オワハラ/スーパームーン/北陸新幹線/ドローン/ミニマリスト/ルーティン/モラハラ/フレネミー/サードウェーブコーヒー/おにぎらず


 毎年のことだが、筆者が知らない言葉も上記には多く含まれている。それにしても「小粒」なものばかりで、この中から「大賞」を選ぶのはかなり悩ましそうだ。2015年は、昨年に続いて流行語が不作の年だった、ということになるのではないだろうか[2]。 例年、流行語の主要な供給源となっている4分野は以下の通りであった。

(1)政治家:「戦争法案」など安保法制に関するものが多くなり、党派色がくっきり割れてしまった。ゆえに超党派で素直に楽しめるものが見当たらない。

(2)お笑い芸人:この分野も不作で、「火花」はお笑いコンビ、ピースの又吉直樹による真面目な芥川賞作品。「♪あったかいんだから~」のクマムシは、歌は上手くてもネタがあまり面白くない。果たして紅白歌合戦には呼んでもらえるだろうか?

(3)人気ドラマ:昨年の「アナ雪」(ありのままで)のようなヒットが今年は見当たらない。近年、好評が続いていたNHK朝ドラも、今年は目立たなかった感あり。年々、テレビよりもネットが流行語の発信源になりつつあるように見える。

(4)スポーツ選手:「ルーティン」など、ラグビーの五郎丸歩選手が孤軍奮闘[3]。年間を通じて、スポーツを舞台とする感動的なシーンは少なくなかったが、惜しむらくは選手の口から自然に出た言葉が欲しかった。


 さて、こういった世相を語るのが本号の趣旨ではない。以下、2015年の日本経済を流行語とともに回顧してみたい。