田中博文(㈱ジェイ・キャピタル・パートナーズ 代表パートナー)

ハイライト

 
・日本郵政の3社同時上場は、早期に金融2社の新規事業を許認可制から届出制にするのが目的

・ゆうちょ銀行、かんぽ生命の販売チャネルがほぼ郵便局に依存しているのは、子会社の独立性として疑義有り。
 
・ガバナンス、利益吸収の課題から、最近は親子上場解消の流れの中での最大の親子上場

 
 さて、9月10日に日本郵政の上場が承認されました。上場日は11月4日です。持ち株会社である日本郵政と、傘下の金融2社であるゆうちょ銀行とかんぽ生命保険が3社同時に上場します。そこで日本郵政の上場について、今回から何回かに分けて書いていきたいと思います。今回は親子上場について書きたいと思います。


小泉政権下で郵政民営化決定するも、民主党政権で一旦凍結

 

 先ずは郵政民営化の経緯に触れたいと思います。郵政民営化法案は小泉政権時代の2005年7月、衆議院本会議でわずか5票差で可決されたものの、同8月、参議院本会議で否決となったため、小泉総理は民営化の賛否を国民に問うとして、衆議院を解散しました(郵政解散)。そして同9月の衆議院総選挙で、与党の圧勝となった結果、同10月に郵政民営化法が成立、2006年1月、民営化後の持株会社となる準備企画会社として、日本郵政株式会社が設立されました。そして同9月、事業受け皿会社としての株式会社ゆうちょ、株式会社かんぽが設立されます。

 また、2007年10月に当時の福田康夫総理のもと、元三井住友フィナンシャルグループの社長だった西川義文氏を日本郵政の社長に迎え、日本郵政の傘下に4つの事業会社(郵便事業、郵便局、ゆうちょ銀行、かんぽ生命保険)が入る体制が発足しました。同時に、政府が3分の1超を残して日本郵政株を売却することと、ゆうちょ銀行とかんぽ生命保険は2017年9月までに全株売却することが定められました。
 

 しかし、2009年8月に民主党政権が誕生後、同12月に郵政株売却凍結法案が可決成立し、一旦、民営化が凍結されることになります。この政権交代時、「政府と隔たりがある」として西川社長は退任、元大蔵次官の斎藤次郎氏が後任となりました。

 その後、安倍政権発足後、自民党は再度郵政民営化を進めるため、2012年4月、郵政民営化法の改正案が可決成立し、これによって、2012年10月に郵便事業株式会社と郵便局株式会社が合併、「日本郵便株式会社」として統合することになりました。

 日本郵政グループは5社体制から現行の4社体制に再編され、またこの時に、株式会社ゆうちょ銀行と株式会社かんぽ生命保険の株式については、両社の経営状況とユニバーサルサービス確保への影響を勘案しながら早期売却を目指すことになり、従来の2017年9月までにゆうちょ銀行、かんぽ生命保険という金融2社の完全売却という期限はなくなり、「できる限り早期に」という努力義務となりました。当面の間は50%以上の売却を目指すとの表現にとどまっています。そして、日本郵政社長は13年から元東芝会長の西室泰三氏が務めています。現在はこの運営方針の下、上場準備が進んでいます。

売却スキーム

 

 全体の企業価値評価(バリュエーション)にもよりますが、今回の上場の資金調達額は約1兆円から2兆円との間と言われており、財務省としては、その資金をいかに多く財務省が確保し、東日本大震災の復興支援に回すかが重要とされています。

 その過程の中で、当初、持ち株会社の単独上場を目指していた計画は、西室社長の強い意思により、ゆうちょ銀とかんぽ生命も併せた、過去に例がない巨額の「親子同時上場」となる予定です。