石川温(ケータイ/スマホジャーナリスト)

 安倍首相が9月11日の経済財政諮問会議で「家計における通信料金の負担が増している」という指摘をしたことで、携帯電話料金を引き下げようという議論が進行している。

 年内に結論を出そうと総務省主催の「タスクフォース」が動いているのだが、「矛盾だらけの議論でよくわからない」(KDDI・田中孝司社長)と業界からは戸惑いの声が続出。消費者としては「スマホの料金が安くなる」と歓迎したいところだが、一筋縄では行かなそうだ。
携帯電話の料金引き下げ策を議論する有識者会議の初会合=10月19日午前、東京都千代田区
 総務省のタスクフォースでは「ライトユーザー向けプランの設置」「MVNO(格安スマホ)の促進」「端末価格と通信料金の分離」が議論の中心となっている。

 ライトユーザー向けプランに関しては「スマホをあまり使っていないユーザー向けの料金プランがないに等しい。各キャリアは1GBや1.5GBのプランを作るべき」(高市早苗総務相)としている。

 実際、NTTドコモやKDDI、ソフトバンクでは2GBからしか契約できない。

 しかし、ソフトバンクのサブブランドであるワイモバイルではいまでも1GBから契約が可能だ。すでにライトユーザーはワイモバイルを選べば何ら問題ない。

 また、MMD研究所の調べによれば、実際、月間に1GB未満しか使っていないユーザーは、1割程度しかいないという。

 つまり、仮にタスクフォースの議論の末、大手3キャリアで1GBのプランができたところで、恩恵を受けられるのは1割程度のユーザーでしかないのだ。
 
 ここ最近、格安スマホが盛り上がりを見せ、ようやく一般にも認知されてきた。大手キャリアに比べて、半額から3分の1程度に通信料金を抑えられると好評だ。

 しかし、タスクフォースでは「MVNO(格安スマホ)を促進する」という目標をかかげているが、一方で、大手3キャリアが通信料金の値下げを実施すれば、格安スマホとの料金差は縮まり、一気に格安スマホの人気が下火になる可能性がある。

 結局は「iPhoneが使えて、全国にショップ網も充実して、いざという時のサポートも強い」という大手キャリアにユーザーが留まり続ける恐れが出てきてしまうのだ。

 MVNO会社の幹部は「総務省の議論で格安スマホに注目が集まるのは嬉しいが、大手キャリアに値下げされるのは困るのも事実」と困惑気味だ。