復興財源4兆円ありき

 今回の上場の発端は、13年初めに安倍政権が復興財源として郵政上場益4兆円を充てこんだこと。そのために1回1.4兆円の売り出しを3回行う、安定消化が必須だから個人向けで高い配当性向と、全て逆の順序で決まっていった。

「金融リテラシーの低そうな国民に対する体のよい復興増税」と言えば口が悪すぎるだろうか。かくして、郵政民営化の大義は忘れ去られ、郵政グループの企業価値をどう向上させるのかという検討は後回しとなった。

 上場から1カ月経った12月3日、日本郵政は最高値の1946円を付けた。この日はちょうど、上場翌日の11月5日から日本郵政が実施してきた自社株買いが、今回計画の上限の7000億円超に達し、買い付けを終了した日。財務省は3日朝、東証、東証立会外取引でほぼ同額の日本郵政株を売却している。

 財務省が保有しているのは日本郵政の株であり、ゆうちょ銀とかんぽ生命の株は日本郵政が持っている。3社上場で財務省に直接入るのは日本郵政株の売却益約7000億円だけ。ゆうちょ銀とかんぽ生命の株式売却益7000億円はいったん日本郵政に入ってしまうため、自社株買いのスキームを用いて財務省に資金を移動させていることになる。

 日本郵政は今年2月、郵便事業会社の日本郵便が豪物流大手トール社を約6200億円で買収することを発表したが、郵便会社にそんな資金はない。ゆうちょ銀に自社株買いをさせて日本郵政に資金を移し、さらに日本郵便の増資を通じて日本郵便に資金を移動させている。このスキームを応用したわけだ。

 2回目、3回目の売り出しでも同じ自社株買いスキームを用いて国は日本郵政グループから4兆円を吸い上げるわけだが、大株主の政府と今回日本郵政の株を買った少数株主の間に対立は起きないのだろうか。

国主導の「上場ゴール」

 株価の今後を確定的に占うことはできないが、配当利回りが選択の鍵になっているということは、郵政3社の株価には重しがあるとみたほうがよく、現在の株価の上値をさらに追う展開にはなりづらいだろう。とすれば、上場時点がもっとも株価が高い「上場ゴール」を国が主導したことになるから笑えない。

 あちこちにこれらの歪みを発生させてでも形式的な民営化は進んでいく。国は復興財源を得たいだけだが、郵政幹部の真意はどこにあるのか。民営化とセットで、ゆうちょ銀の預入限度額の引き上げや、手をつけやすい新規事業の認可は進めてもらう。一方で完全民営化は阻止して、郵便と金融事業の一体性を維持し、ユニバーサルサービスを盾に雇用を維持するというあたりが狙いだろう。

 郵政がゾンビのように生き残ることは、特定郵便局長の票を当て込む政治家にとって都合がよく、国債を消化してくれる存在が残るという意味では霞が関にとってもウェルカム。結果、抜本的な根治改革はなかなか着手されない。

 小泉純一郎氏の郵政解散は、ちょうど10年前の夏。あの熱狂を思い出せない国民は多いだろう。上場の真実が何であろうが、10年後も大して問題になっていないのかもしれない。