18歳一括成人化を逆手にとって通過儀礼を復活させる


 そこで、通過儀礼という社会的機能の側面から少々大胆な提案をしてみたい。すなわち「参政権の引き下げはすでに決定済。ならば他も一斉に引き下げてしまうべきだ」。ただし、前述したような懸念の意見も考慮する必要がある。ではどうするか。

 これまで20歳で付与されていた資格、責任は18歳とする。ただし高校在籍者(現在、進学率は96%)の場合、飲酒、喫煙、ギャンブルは卒業まで禁止。少年法も高校在籍中はこれを適用する。つまり規定を「年齢」ではなく「年度」で区切ってしまう(18歳適用になってしまった参政権はもはやどうしようもないので例外とする)。そして、成人という通過儀礼をこれまで以上にアクティブなものにするために、これを逆活用してしまうのだ。

 プログラムは以下のようになる。

 まず高3時、選挙が行われる歳には事前に選挙、投票についての特別学習プログラムを実施する。これには投票日に18歳に達しておらず、参政権を保有しない生徒も含まれる。こうすることで政治経済の科目をリアルに学習することが可能となる。同様に、卒業が近づく頃には飲酒、喫煙、ギャンブル、少年法についての学習プログラムも実施する。

 こうすることで、これら成人に与えられる責任・資格について前向きに取り組もうとする姿勢を涵養することが可能になる。投票については、前述したように授業と実際の投票が重複することで、投票についての認識が高まる。飲酒、喫煙、ギャンブル、少年法についても、これらが高校を出た瞬間適用されるという現実を突きつける状態で教育が施されるため、学習へのモチベーションが高まる。

 実は、大学では投票についての教育など実施していない。飲酒や喫煙に関しては、最近その指導を行ってはいるが、大学は高校のように生徒を管理する組織ではない。そして、それらを施した時にはすでに成人に達していることもあり、学生はなかなか耳を傾けようとはしない。ところが、このように成人資格の18歳適用を利用して高校教育の中で「社会人教育」を行えば、いわば「馬の鼻先に人参をぶらさげる」ことになる。実質的なキャリア教育としての学習効果は絶大なのだ。

重要なのは若者の政治意識の涵養


 そして、こういった18歳一括成人化を利用したプログラムによって社会人としての対応方法を事前に学ぶことは、翻って通過儀礼としての「成人」の認識を若者たちに植え付けることを可能ならしめる。高卒=社会人、そしてそのための準備ということで成人であることとそうでないことの境界線を視覚化できるからだ。

 参政権の引き下げは、政治的な側面で若者を利用しようとするような目先の思惑ではなく、こういった若者を将来を考えるよりも包括的な視点からの考察が重要だろう。それは、必然的に日本の若者の将来だけでなく、実は日本の将来を見越した視点でもあると筆者は考える。

あらい・かつや メディア研究者。関東学院大学文学部教授。昭和35年、静岡県生まれ。法政大卒業後、東洋大大学院社会学研究科修了。専門はメディア社会論。フリーライター、予備校教師などを経て、平成10年に宮崎公立大講師。同大准教授を経て、20年から現職。ブログ「勝手にメディア社会論」を展開中。メディア論、記号論、社会心理学の立場から、現代のさまざまな問題を分析。アップル、ディズニー、バックパッカー、若者文化についての情報も。