「トリプルスリー」が今年の流行語大賞に選ばれた。

 打率3割、30本塁打、30盗塁を同じシーズンに達成すること。長いプロ野球の歴史の中で、昨季までわずか8人しか果たしていないトリプルスリーを、今季はセ・リーグで山田哲人(東京ヤクルトスワローズ)、パ・リーグで柳田悠岐(ソフトバンクホークス)が達成した。二人同時達成は65年ぶり。65年前の1950年、岩本義行(松竹ロビンス)、別当薫(毎日オリオンズ)が達成している。

ユーキャン新語・流行語大賞2015で「トリプルスリー」が年間大賞を受賞。
フォトセッションでポーズをとるヤクルト・山田哲人(左)とソフトバンク・柳田悠岐
=12月1日午、東京都千代田区の帝国ホテル (撮影・大橋純人) 
ユーキャン新語・流行語大賞2015で「トリプルスリー」が年間大賞を受賞。 フォトセッションでポーズをとるヤクルト・山田哲人(左)とソフトバンク・柳田悠岐 =12月1日午、東京都千代田区の帝国ホテル (撮影・大橋純人) 
 岩本は39本塁打、34盗塁、打率.319。別当は43本塁打、34盗塁、打率.335。この二人が日本プロ野球史上最初のトリプルスリー達成者だ。実はその年、ホームランが1本足りず記録を逃した選手がいた。“打撃の神様”川上哲治(巨人)だ。29本塁打、34盗塁、打率.313。もし川上があと1本ホームランを打っていれば、3人同時達成となっていた。

 「あと1本」と言えば、長嶋茂雄もそのひとり。すでに各所で紹介されているとおり、入団1年目に長嶋は29本塁打、37盗塁、打率.305の成績を残している。しかも、本当は30本を打っていた。シーズン終盤、「幻」となった28号を打った際に一塁ベースを踏み忘れ、アウトになった。それさえなければ、長嶋もトリプルスリー達成者になっていた。

プロ野球日本シリーズ阪神対ソフトバンク第1戦 
右適時打を放つソフトバンク・柳田悠岐
=10月25日、甲子園球場 (撮影・山田俊介) 
プロ野球日本シリーズ阪神対ソフトバンク第1戦  右適時打を放つ
ソフトバンク・柳田悠岐 =10月25日、甲子園球場 
(撮影・山田俊介) 
 達成者はほかに、中西太(西鉄ライオンズ)、蓑田浩二(阪急ブレーブス)、秋山幸二(西武ライオンズ)、野村謙二郎(広島東洋カープ)、金本知憲(広島東洋カープ)、松井稼頭央(西武ライオンズ)だ。

 トリプルスリーという言い方は、野球界でも“通”は使っていたが、それほどみんなが知っている言葉ではなかった。それが今年、一気に“流行語大賞”に選ばれるほど常識的な言葉になった。

 野球に関わるひとりとして、この“流行”は今後の野球界にとって大きな意義を持つ、将来が楽しみだと感じている。“トリプルスリー”を目指す流れが野球界の新潮流になれば、間違いなく野球は面白くなる、レベルアップするだろう。

 ここ数年、野球界で選手個人を評価する場合、打者なら「ホームランの数」、投手なら「スピードガンの数字」を重視する傾向が続いていた。スカウトがドラフト候補を探すとき、メディアが注目選手を語るとき、それらが最もわかりやすいバロメーターに使われるようになって久しい。本当はそれだけでなく、足の速さ、肩の強さ、守備力など、他の要素も検討材料には違いないが、真っ先に語られるのが「通算本塁打数」と「最速スピード」だから、どうしても、選手も指導者ともその数字を気にする。