猪野亨(弁護士)

 2015年9月19日、戦争法案が自民党、公明党によって可決され、成立しました。この法案に反対を表明してきたものとして、今回の戦争法案が成立してしまったことについて、どのように考えるのか表明しておきたいと思います。

 今回の戦争法案は、従来の政府見解によっても憲法違反の集団的自衛権の行使を容認するものです。これほどあからさまな憲法違反の法律はありません。立憲主義を正面から踏みにじった内閣と国会の姿勢でした。

 このような国会には、もはや内閣の行う派兵行為をコントロールする能力も資質もないことを見せつけてくれました。

 安倍氏が右向け右と言えば、自民党所属の国会議員はすべて右を向きます。安倍自民党が右向け右と言えば、公明党は結局、最後は右を向きます。自民党・公明党が与党である限り、集団的自衛権の行使と海外派兵に対する制限は存在しません。

 自民党にも公明党にも個別にはいい人もいる… もうそんな屁理屈はいりません。すべて自民党議員(但し、村上誠一郎議員を除く)、公明党議員は同罪です。

 これほどまでの違憲立法に対し、何も表明しなかった、できなかったという大罪は決して許されるものではなく、この反対行動をしてきた人たちが「落選運動」を提唱していることに非常に共感するものです。次の参議院選挙、そして衆議院選挙もこの「落選運動」を粘り強く続けていきましょう。

 そして、この反対運動が示した効果は非常に大きなものがあったと思います。安倍氏が憲法「改正」も憲法の改正条項の「改正」も断念しましたが、もし、そのようなことを行おうとすれば、これまで以上の反対運動が国民の中からわき起こるだろうことを示してくれました。

 何よりも若い人たちが立ちが上がりました。政治に無関心と言われた若い人たちですが、自分のことと考え、立ち上がったことは安倍自民党にとっては全くもって想定外だったことでしょう。日本国民の良識の結集があれば憲法の改悪はできない、それを支配層に見せつけたことです。

2012年2月、南スーダンの首都ジュバで、国連平和維持活動(PKO)のために派遣された陸上自衛隊の先遣隊(早坂洋祐撮影)
 さらには国民の反対が強いということは自衛官にも拒否の意思を強く持ってもらいたいことです。

 海外への派兵は、建前は志願制です。命令でもって戦地に動員するということは行われない建前です。しかし、実際は無言の圧力の強制が行われます。拒否者には陰湿なイジメがあるかもしれません。そのような自衛隊で良いのか、私たちにも問われます。既に政府内では、南スーダンでの駆け付け警護が「内定」しています。北海道の北部方面隊から派兵されるのではないかと言われています。


 既に隊員には無言の圧力が加えられていることでしょう。このような事実上の強制は自衛官を確実に精神的に追い詰めます。

 この法案に賛成した人たちは、それでいいんだということなのでしょうが(だから徴兵制はいらないんだというわけです)、この法案に反対した私たちまで、それでいいというわけにはいきません。まさに反対運動に掲げた「わたしたちは闘わない」という言葉に象徴されるとおり、決して自衛官を送り出してはなりませんし、その支援こそすべきです。

 現実に問題なのは、実際に戦死者が出た場合です。安倍自民党にとって戦死者を出すことは当然の前提であり、必ずやかいくぐらなければならない壁です。これで1人でも戦死者を出したことによって国民の批判が高まり、事実上、出兵ができない状況になることは絶対に回避されなければならないことなのです。

 そのため、戦死者の死の批判を政府に向かないよう、ウヨクマスコミを動員して戦死者が「英雄」であるという演出をすることです。しかも必ずや遺族が悲しみの中にあるのに批判とは何事だという誹謗中傷がネット界では飛び交います。マスコミがそれを利用する構図です。

 絶対にこのような妄動に乗せられてはいけません。戦死者を出さない、ではなく、出兵させない、英雄扱いしない、あくまで自民党政権の犠牲者であり、国民は一切、拒否していることを今後も示さなければなりません。

 この戦争法廃止のためにがんばりましょう!