板倉陽一郎(弁護士)

ステルスマーケティングを巡る問題


(1) ステルスマーケティングの定義
 ステルスマーケティング(ステマ)については、実体法上の定義は存在しないが、裁判例上、「『ステマ』とはステルスマーケティングの略であり、消費者に宣伝と気付かれないように宣伝行為を行うことを意味するものである」(東京地判平成26年6月4日判例集未搭載(平成25年(わ)第30183号))と事実認定した例が存する。

 本稿においても、ひとまずはステルスマーケティングを「消費者に宣伝と気付かれないように宣伝行為を行うこと」ととらえ、ステルスマーケティングの法的問題を概観していく。

(2) ステルスマーケティングが問題となった事例
 具体的にステルスマーケティングが問題となった事例としては、口コミサイトや有名人のブログを用いたものが挙げられ、近年では、いわゆるネイティブ広告がステルスマーケティングの一種ではないかと問題視されてきている。

平成24年初頭、“やらせ書き込み”が問題になった口コミサイト「食べログ」(飯田英男撮影)
 口コミサイトや有名人のブログを用いたものは、平成24年頃から問題視され、「飲食店の口(くち)コミサイト『食べログ』で、やらせ業者が好意的な口コミ投稿を有料で請け負っていた問題で、飲食店以外にも矯正歯科やエステサロン、美容外科などの口コミサイトで同様の“やらせ書き込み”が相次いでいることが14日(注:平成24年1月14日)、分かった」[1]、「『人気商品を格安で落札できる』などとうたったインターネットのペニーオークション(ペニオク)をめぐり、落札できない仕組みなのに入札手数料として現金を詐取したとして、京都、大阪両府警が昨年12月(注:平成24年12月)、サイト運営者らを初摘発した。事件は、人気タレントらがブログに虚偽の『落札情報』を書き込んでいたペニオクの実態だけでなく、宣伝を巧妙に口コミに見せかける『ステルスマーケティング』(ステマ)の横行も浮き彫りにした。この手法は欧米では違法とされ、消費者庁もその動向を監視し始めた」[2]などの報道が相次いだ。

 他方、いわゆるネイティブ広告については、「メディアの形式・機能と一体感のあるデザイン、内容、フォーマットの広告」などと説明される場合があるが[3]、要するに、一般の記事と区別がつかない広告のことである。ニュース風の記事の題名の中に[PR]などと入っているものが典型的であるが、広告であることの表示が極めてわかりにくいものや、そもそも広告であることを表示しないものもあることから、平成26年頃から一般にも問題視され始めた。

 メディアが中立的に記述、報じた記事については、消費者は当該メディアへの信頼度に応じてその記事中の評価を文字通りのものとして受け止めるが、[PR]等の記載がある場合、当該記事は中立的でないことが明らかであることから、消費者に読まれる(クリックされる)率は明らかに低下する。メディアにとっても、広告主にとっても、広告主から資金が提供され、そのため当然に広告主に有利なこと(又は広告主の競争者に不利なこと)しか書かれていない記事に「資金が提供されている」という関係性を明示しないインセンティブは非常に高い。

 上記の通り広告であることを明らかにする物もあることから、ネイティブ広告のすべてがステルスマーケティングに該当すると認識されているものではないが、「消費者に宣伝と気付かれないように宣伝行為を行うこと」に該当するものもあるのではないかということである。

 以下では、これらの事例を念頭に、ステルスマーケティングの規制をみていく。