マイナンバー導入で詐欺師たちが動き始めた。彼らはどんな悪知恵を働かせているのか。元神奈川県警刑事で犯罪ジャーナリストの小川泰平氏が解説する。

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 マイナンバーは、制度の「複雑さ」と、それに対する「国民の不安・理解不足」という側面があることから、詐欺グループにとって使いやすい舞台装置になる。たとえば、年金への不安と組み合わせてつけこむ、こんな詐欺が考えられる。

〈ある日、「年金相談事務所」から1通のハガキが届く。そこにはあなたのマイナンバーとともに「年金未納」の文字。書かれた電話に連絡すると、職員を名乗る人物が応対する。
マイナンバー汚職で厚生労働省に捜索に入る警視庁の捜査員=10月14日午前、東京・霞が関
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「マイナンバーで、あなたの過去の年金未納が判明しました。このままでは将来、年金が支払われない可能性があります。未納のままだと、最悪の場合は自宅の差し押さえとなります」

「期限までに指定する口座に未納分を振り込んでください。今なら間に合います」〉

 2013年度、国民年金の未納率は約4割。心当たりがある人なら、慌てて支払いをしてしまいかねない。ハガキの宛先が学生など若者の場合は、親が心配して支払いをしてしまうパターンも考えられる。

 さらに、これまでの事件の手口から考えると、次のような詐欺も予測される。

【マイナンバー漏洩詐欺】
“マイナンバー管理会社”を名乗る人物から「マイナンバーが漏洩している」と電話があり、悪用される可能性があるという理由で番号の消去や変更に伴う手数料を要求される。さらに別の人物が「今後の漏洩を防ぐ」という名目で“ナンバー管理代行”を持ちかけてくる詐欺もあるだろう。

【ニセ還付金詐欺】
 消費税アップ時の軽減税率の方法として、スーパーなどでマイナンバーを提示した上で一度10%分を支払って、後から2%分が還付される制度が検討されたことは記憶に新しい。この案は白紙撤回となったが、「マイナンバーは税金の還付に使える」というイメージがついたことから、詐欺グループはそれを悪用する可能性が高い。

 例えば「マイナンバーを使えば住宅ローン減税で還付金が受け取れる」などと虚偽情報でそそのかし、「申請代行手数料」を騙し取る手口が考えられる。

【副業をネタにした嘘の脅迫】
 マイナンバーでは副業やアルバイトの収入が明らかになることが報道されている。そのため、「マイナンバーであなたの娘が風俗で働いていることが判明した。情報を消すためには金銭が必要」といった電話がかかってくるケースが考えられる。あるいは「バラされたくなければカネを払え」といった虚偽の恐喝や脅迫もあるだろう。

 いずれは銀行口座や証券口座にマイナンバー登録が必要になると示唆したうえで「マイナンバー不要で、税務署にバレないお得な資産運用の方法がある」という詐欺が出てくるだろう。

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