羽生結弦が、NHK杯で記録した世界最高得点をまたしても更新し、男子シングルス初のグランプリファイナル3連覇を達成した。向かうところ敵なし。群を抜く強さと安定感で他の選手を圧倒している。

 かつて日本のフィギュアスケーターといえば、作り笑顔の裏に恐れを抱え、実力がありながら不安な呪縛をまとっている印象が強かった。見ている方も、いつ失敗するか、心配ばかりが先に立って苦しい感じだった。そして実際、ジャンプ失敗に悲鳴をあげ、肩を落とすことが多かった。

フィギュアスケートのGPファイナルで男子初となる3連覇を達成し、
メダルを手に笑顔の羽生結弦(中央)、3位となった宇野昌磨(右)、
2位のハビエル・フェルナンデス=12月13日、バルセロナ
フィギュアスケートのGPファイナルで男子初となる3連覇を達成し、 メダルを手に笑顔の羽生結弦(中央)、3位となった宇野昌磨(右)、 2位のハビエル・フェルナンデス=12月13日、バルセロナ
 ところが、羽生結弦はそのような不安を感じさせない。成功のために飛ぶ、感動の渦を巻き起こすために飛ぶ、自信と意欲に満ちあふれている。

 日本の若者は、気質が変わったのか? 今季の羽生結弦の戦いぶりを見ていると、揺るぎない頼もしさに感嘆させられる。

 彼の成長をスポーツ的に分析することはもちろん可能だ。スタミナ不足で演技が乱れることがなくなった、それも明らかな成長点だろう。

 羽生結弦の成長の過程を垣間見るため、3年前のインタビュー記事を読み返してみた。すると、スタミナ不足はもとより、「世界のトップと争うには、大人のスケーティングが必要だと感じています」といった具体的な自己分析があり、3年後のいまはことごとくその課題をクリアし、実現しているのがわかる。

 ソチ五輪の2年前、野口美恵さん(スポーツライター)のインタビューに答えて羽生結弦は次のように話している(キャノン・ワールドフィギュアスケートウェブ掲載)。
「スケーターって、『アーティスト』であり『アスリート』でもある。どっちの魂も捨てちゃダメなんだと思っています」

 かつて大舞台で実力を発揮しきれなかった日本選手の多くは、アーティストとアスリートの狭間で揺れ動き、自分の両足をどちらに置けばいいのか、あやふやな迷いによって自滅したようにも見える。羽生にはそれがない。芸術性を追求する意識より、闘争心、勝負への執念を強調する。

   NHK杯のショートプログラムで世界最高得点を出した直後も、その大会最大のライバルであり、羽生の前に滑った金博洋(中国)の名を挙げて、
「普通なら意識しないでというところでしょうが、僕はあの得点には絶対負けないぞと、思いっきり意識してずっと滑っていました」と、はにかみながらも明言した。清々しいほどの競争心、アスリートの心意気を前面に表した。それでいて、金に対する敵意は感じられない。ライバルへの競争心を露わにしながら、嫌味がない。それは、金の点数など本当はさほど意識していない、自分の演技ができれば結果は間違いないことがわかっている、確信の裏返しでもあるだろう。