佐藤 登(名古屋大学客員教授、(株)エスペック上席顧問)


技術流出の分類

 一般に、技術流出が不正流出と直結されて議論される場合が少なくないが、技術流出と一言で言っても、それに至るまでにはいくつかのパターンがあり、議論を一緒にはできない。そこで、技術流出に至るケースを分類し、それぞれの議論が必要だ。ここでは、以下に示すように3つの分類に分けた。

分類1:営業機密、研究開発データなどの不正取得による流出。

 代表的なものが東芝の事件である。サンディスクの元技術者が転職先の韓国半導体メーカーである・SKハイニクスにNAND型メモリーに関する最先端技術研究データを渡したという事件である。

 似たような事件もあった。韓国のポスコが新日鉄住金の鋼材技術を不正取得した事件(2012年)、中国企業がサムスンディスプレイとLG電子の有機EL(エレクトロルミネッセンス) テレビ技術をイスラエルの検査機器供給会社経由で不正取得した事件(2012年)が代表的な事例であるが、いずれも不正取得がキーワードである。

分類2:取引先や合弁相手などから情報開示要求に応えることでの流出。

 特に資本提携や技術提携の枠組みである合弁事業の場合に起こりやすいケースである。

分類3:退社や移籍に伴う人材流出によって起こるもの。

 実は、この分類に対する歯止めがもっとも難しい。

特許で押さえるのが第一段階

 どの分類にも共通して言える基本的な対処法は、特許構築・ノウハウ蓄積である。特許で押さえておけば、それに反する場合は摘発できる可能性が高くなるわけで効果は大きい。

 ただし、出願時の特許クレーム範囲については十分な戦略が必要である。そして、いかに強い特許にできるかが鍵である。もっとも課題は、出願しても審査請求で拒絶され登録されない場合である。出願内容は公開されることから、登録に至らなければ手の内を明かすことになる。類似した技術やそれを基盤にして更にレベルアップとなる技術がほかから創出されることもあり得る。

 また、特許が成立しても、その技術を他社が無断で使用した際に摘発できなければ特許の威力はないわけで、そのような場合はノウハウで押さえておく工夫も必要である。特許かノウハウかは慎重な判断が必要だ。

 もう1つの共通項目は機密管理システムである。ここが疎かになると大きな問題を引き起こす。機密内容に対するアクセス権の厳格化、アクセスできる人物の特定、出退勤時のチェック機構、記録媒体の登録制度、機密区域への持ち込み制限などの対応も不可欠である。東芝事件の根源は、この機密管理システムの甘さに大きな原因があった。