児玉克哉(社会貢献推進機構理事長)

 大阪の橋下市長と松井知事が、新たな国政政党「おおさか維新の会」の旗揚げを表明しました。この二人はすでに維新の党を離党しており、維新の党との違いを強調し、本物の維新を作りたいと言っています。つまり現在の維新の党は偽物になった、とまでいうのです。第三者からは元祖と総本家との争い、といって感もあり、わかりにくい構図となっています。

 新党は、大阪の副首都化を政策の柱に掲げ、東京一極集中からの脱却を目指しています。そして大阪都構想。それらを中心にして地域分権をうたっています。国政の政策的には野党よりも、自民党に近いものとみられます。安倍内閣を国政の政治としては支えながら、地域分権の視点からは東京集中の一極化から、東京と大阪の二極化を目指す、というところでしょうか。

 維新の党は、そもそも橋下氏を中心に作ってこともあり、また橋下人気でここまでの党になったこともあり、現在の維新の党のメンバーの中にも橋下氏に同調したい人も多くいると考えられます。しかし、橋下氏らについていく議員が限定的になったのには、党名の問題もあります。他地域で活動する議員が、「おおさか」を冠とした政党にはいることは、相当に難しいことです。東海地域にも何名か国会議員がいますが、彼らが「おおさか」を掲げて支援者の理解を得れるのか、次の選挙を戦うことが出来るのか、です。大阪的な政策が中心では、おいおい、名古屋はどうなるの?といった声も聞こえてきそうです。
「おおさか維新の会」結党大会を終え会見する(左から)幹事長の松井一郎府知事、代表の橋下徹大阪市長、市長選立候補予定の吉村洋文政調会長=10月31日、大阪市浪速区(門井聡撮影)
 今回、あえて大阪ではなく、ひらがらのおおさか、としたのには、おおさかを地域主権の象徴としたいという意図はあるのでしょう。しかしそれでも「おおさか」の名のもとに別の地域の議員が活動することは困難です。

 私はおおさか維新の会が全国の人にアピールするには、現在のままではかなり難しいと感じています。橋下氏個人への人気はまだ高いものがあります。知名度も、アピール力もすごい。しかし分裂や他への批判が重なると、さすがに橋下流についていけないと考える人もでています。けんかをしながら大きくなってきた「橋下維新」ですが、けんかばかりが続いていては、やはり限界がみえてきます。橋下氏の個人的なカリスマ性に惹かれても彼が何をやりたいのかはわからない、という人も少なからずいるでしょう。橋下新党がこれから日本全体での支持を受けるかどうかは、明確な方向性が示されるかどうか、にかかってくるでしょう。

 私は、二つの方向性があると思っています。

 まず第一に、大阪を中心とした「自主独立の大阪州」を作ることを明確にうたった方向です。イギリスのスコットランドや、スペインのカタルーニャやバスクのように独立を要求する流れがヨーロッパに出てきました。そこまで行かないにしても、特別自治区を作り、今よりもはるかに強い独立性・自主性を確保するという要求は面白いと思います。大阪副首都、というのはむしろわかりづらい。東京No.1、大阪No.2を明記しろ、というだけでは物足りないのです。地域政党として、東京に対峙する大阪特別自治州を作るというのであれば、方向はかなり明確になります。また大阪が自治州化するなら、他の地域もそれにならえ、ということで、一気に道州制の流れになります。日本を変えるという大きな流れにつながることがわかりやすくなります。大阪自主独立を最優先する地域政党の方向性です。

 第二の方向は、保守新党の役割を明確にするものです。橋下氏の政策のかなりは安倍首相のものともつながるものがあります。保守新党として、立場を明確にして、民主党や維新の党などと対峙するというスタンスを取る方向です。それなら自民党に入ればいいのではないか、という声も聞こえそうですが、改革志向の強い保守新党というイメージを前面に出すということで、アピールすることになるのでしょう。この場合には党名は、おおさかを離れて、全国の人を巻き込む戦略が考えられます。

 今のままでは中途半端。どちらかの方向を明確にして、日本の新たな「維新」を実現するというアピールが必要でしょう。今のままだと、個人商店的な政党のイメージがつきます。やるならもっと大胆に、と思います。

 夢を語る政治家が少なくなりました。その夢を語る政治家の一人に橋下氏がなるのかどうか。なってほしいとは思いますが、このままではその夢がなになのか、わかりづらいのです。