八幡和郎(徳島文理大学教授、評論家)

 大阪ダブル選挙は、「おおさか維新」の松井一郎知事と吉村洋文前代議士が、それぞれ栗原貴子前府会議員、柳本顕前市議に圧勝した。知事選挙は、ほぼダブルスコア、市長選挙は3:2の比率だから楽勝だった。

 知事選挙では現職が有利なのは当たり前だが、市長選挙では各党相乗りで知名度にも優れる柳本候補が勝つのが当然で、有名タレント候補でも出さねば、一勝一敗だろうと当初は予想されていた。

 しかも、自民党の候補を、民主、共産が支援し、SEALDsまで応援、維新の党は分裂して、残留組は「おおさか維新」に罵詈雑言だった。そういう厳しい情勢で、市長選挙でも吉村候補が圧勝したのであるから、まさに、「完勝」である。

 橋下市長は今年の5月に「大阪都構想」についての住民投票で敗れて、政界引退を表明しているわけだが、今後とも政界への影響力は保持するし、復活論も強まるだろう。そして、ポスト安倍不在のなかで、宰相待望論も浮上してくることも間違いない。

大阪市議会本会議で、傍聴席からの声に手を上げて
応える橋下徹市長=17日午後
 政界引退を明言したのだから、合理的な期間の隠遁は必要だが、引退表明を撤回して復活した政治家などいくらでもいる。

 それでは、宰相候補としてふさわしいかといえば、多くの点で考え直して欲しい点はあるが、現状で安倍首相がいずれ引いたあと、同等の水準の総理候補などいないのだから、直接の継承かどうかは別として、浮上してくるのは当然だろう。

 また、人気絶頂だったころに比べて、政治家として円熟してきているとも思う。また、支える「おおさか維新」の政治家たちの成長も著しい。ただ、橋下氏自身が克服すべきことがあると思う。それを本稿の後半で論じたいが、とりあえず、ダブル選挙での「おおさか維新」の勝利の背景を簡単に分析する。

 ダブル選挙での維新の勝利については、(1)維新の内紛が東京VS大阪の図式になってしまった。(2)大阪都構想の投票後の自民はじめ与野党の態度が悪すぎた。(3)自民・共産党相乗りという非常識、ということだと思う。

 (1)東京の維新残留組が大阪の有権者の投票で生じた政党交付金まで独占するのは大阪の有権者にとって許せない。さらに、残留組は大阪が党本部なんておかしいと騒いだ。また、麻生副総理の、都だったこともないのに都なんぞおかしいなどという発言も、難波京からの歴史を誇りにしている大阪人の神経を逆なでたし、そもそも、明治維新のとき東京・京都・大阪にメトロポリタンといったニュアンスの「府」という名を与えて特別扱いした経緯も無視した発言だった。

 (2)大阪都構想は否決されたが、主たる理由は老人パスがなくなるとかいう有権者自身も後ろめたく感じるような個人的な損得で、前向きの意味での反対ではなかった。一方、二重行政の矛盾は誰でも感じているのだから、代替改革案に熱心であるべきだった。

 (3)自民・共産の共闘はどっちの支持者にとってもいじましく感じられたし、公明党支持者などもアンチ維新に勝たせていいのか躊躇した。自民党候補の応援をSEALDsなどが応援しているのも、彼らが共産党の意向さえあればどこにでもくっつくという印象を与えた。
 とくに大阪では経済が沈没したのには1970年代の黒田共産党府政の責任が大きいことは誰でも知っており、民主党の前原誠司氏がいうシロアリ論も説得的だった。