櫻井幸雄(住宅評論家)

 マンションの建物は必ず老朽化する。そして、老朽化したときの対応は簡単ではなく、極めて面倒。しかし、マンションを買う人、住んでいる人の多くはそのことを意識していない。

 
 漠然と「鉄筋コンクリート造の建物は半永久的に存在し続ける」と思っているからだ。ところが、実際の建物は半永久的の耐久性を持っているわけではない。
 
 では、実際の耐久性はどれくらいなのか。現在の新築分譲マンションであれば、少なくとも60年から80年、メンテナンスをしっかり行えば、100年に達するほどの耐久性を有すると考えられている。しかし、昭和時代に建設されたマンションの寿命はそれよりずっと短い。

 日本にマンションが増え始めたのは昭和30年代から40年代にかけて。その時期に建設された第1世代のマンションが、今、建て替え時期を迎えている。
 第1世代のマンションの寿命は40年から50年程度とされている。だから、昭和30年から40年にかけて建設された“第一世代マンション”が、いま続々と建て替えられているわけだ。

 この“第一世代マンション”は、寿命が短い一方で、建て替えがしやすいという利点がある。建て替えがしやすい理由は、敷地に対してゆったり建築されていたケースが多く、むずかしい言葉で言うと「容積率に余裕がある」からだ。その場合、建て替えによって従前より戸数を増やすことができ、余剰住戸を一般に分譲することで建設費を捻出。元からの住人は1円も出さず、新しいマンションに移り住むことができた。

 これは初期のマンションに限った話。多くのマンションは、建て替えで余剰住戸が生じない。だから、自分たちで建て替え資金を出し合わなければならない。その額は平均的な3LDK住戸1戸あたり2500万円以上とされている。それだけのお金を全住戸が出すことができないと、建て替え計画は暗礁に乗り上げるのだ。

 そんなの聞いていない、と思うかもしれない。しかし、「自分でお金を出して建て替えを行う」のは、一戸建てにおいては当たり前のこと。マンションも同様に、お金を出さなければならないのだ。

 その際、マンションの問題は「多くの人がお金を出し合わなければならない」ということ。一戸建てならば、1家族の決意で建て替えが実現する。しかし、マンションは多くの住戸の総意をまとめる必要がある。これが大仕事なのだ。

 「マンションの建て替えには5分の4の賛成が必要」とされるが、これは、「建て替えの動議が可決するには5分の4の賛成が必要」という意味。5分の4の賛成が得られれば、すんなり建て替えが実現するわけではない。

 実際には、動議が可決した後、100%すべての人が「建て替えをしましょう」「お金が必要ならそれを出します」と同意しないと建て替え計画は前に進み出さないのだ。

 その結果、「1人でも反対者が残った場合、建て替えはできない」という状況が生まれてしまった。それに対し、現在は最後まで残った少数の反対者住戸を管理組合が強制的に買い取って、建て替えを進める手段が生まれている。いわゆる「強制代執行」だ。