米山秀隆(富士通総研 経済研究所上席主任研究員) 

 空き家問題は今のところ一戸建てが中心であるが、近い将来、深刻になっていくと予想されるのが分譲マンションである。全国のマンションストックは613万戸(14年末)に達するが、このうち81年6月以前に建設された旧耐震マンションは106万戸、さらに71年4月以前に建設された旧・旧耐震マンションは18万戸ある。

 今後マンションの老朽化は急速に進んでいき、築40年超のマンションは、10年後には140万戸、20年後には277万戸に達する(図)。
[図] マンションの老朽化
 マンションの完成年次別の空室率を見ると、全体の空室率は2.4%に過ぎないが、74年以前完成のマンションでは空室戸数の割合が10%超の物件が増え、69年以前になると空室戸数の割合が15%超の物件が増えていく(国土交通省調べ)。築40年を超えると、マンションの空室率が高まっていくことがわかる。

 東京都港区などには、初めてマンションが登場した50年代半ばから60年代にかけて建設された物件が点在している。老朽化マンションに対処する方法の一つは建て替えであるが、建て替えできたものはわずかで、多くはデベロッパー主導によるものである。空室化が進み、管理組合が機能していない例もあり、中にはスラム化しているものもある。

 今後はこれまで供給されたマンションの老朽化が進み、同時に居住者の高齢化や空室化が進んで管理が行き届かなくなり、スラム化に至る「限界マンション」が大量に出てくることが予想される。

建て替えの限界と解体のハードル


 建て替えには、容積率に余裕があって従前よりも多くの部屋を造ることができ、その売却益が見込めなければ、デベロッパーの協力は得られない。筆者がかつて行った試算では、東京都区部では1.6~2.8倍程度容積率を割り増さなければ、採算に合わないとの結果が出た。実際、建て替えできたのは全国で211件、1万6,600戸(15年4月時点)に過ぎない(阪神大震災関連を除く、国土交通省調べ)。

 一方、老朽化マンションでは既存不適格物件(建設当時の法令では適法だったが、その後の法改正によって違法となり、従前と同じ容積率で建て替えることができなくなった物件)が多く存在する。既存不適格物件は、70年以前の建設で67%、71~75年の建設で65%もあり(いずれも民間の物件、国土交通省調べ)、これらは建て替えが極めて困難である。

 このように建て替えには限界があるため、他の方策も必要になる。マンションの区分所有権を解消し、敷地を売却して終止符を打つ方法がその一つであるが、この場合、区分所有権解消には全員一致が必要という条件がネックになる。この問題は東日本大震災での被災マンションで、全壊判定されたマンションでも解体できない問題として浮上した。これを受け、法改正により、被災マンションについては5分の4の賛成で区分所有権解消が可能とされ(被災マンション法改正)、次いで、耐震不足のマンションについても同様の法改正がなされることになった(マンション建替え円滑化法改正)。