神浦元彰(軍事評論家)

 政府で日本版NSC創設を急いだ理由は、防衛庁の防衛省昇格(2007年1月)だったと思っている。

 防衛庁(当時)は総理府・内閣府の外局であって、米国防総省の日本側カウンター・パートナーではなかった。しかし防衛省昇格によって、防衛省は米国防総省の公式なカウンター・パートナーとなった。

 それまで日米安保政策を担当する外務省が入手していた米国の軍事情報は、以後、防衛省に提供される流れに変わった。

 外務省には総合外交政策局に安全保障政策課がある。また北米局の中にも、日米安保条約課や日米地位協定室があり、これらが国防総省や在米日本大使館を通じて、軍事情報の提供を受けていたが、それが防衛省・自衛隊に流れる関係に変わった。

 もともと外務官僚には、戦前・戦中に、日本の外交権を軍部(当時)に奪われたという強烈なトラウマがある。そのため外務省は防衛当局が、米国の軍事情報や海外の治安情報を握ることに強い警戒心を持っていた。さらに悪いことに、外務官僚は旧軍部を強く批判するあまり、近代的な軍事知識を軽視する風潮を生んでしまった。今でも、外務省幹部の発言では、軍事音痴を痛感することが多々ある。

 具体的には、尖閣問題(沖縄県)で、軍事と警察の役割区別がつかない発言や、辺野古基地建設問題では、地球規模の米海兵隊の役割を理解していないなど、軍事音痴の外務省幹部(OBを含む)の発言は多い。

 しかし外務官僚の軍事知識軽視はどうであれ、外務省にとって国際テロなど最新の軍事情報を入手することは喫緊の要事であることは言うまでもない。そこで外務官僚が対策に日本版NSCを創設したのではないかと思っている。

 米国政府には国防総省、国務省、CIA、FBI、国家情報長官など、国家が直面する安全保障の重要問題を協議する機関として、大統領府(ホワイトハウス)内にNSC(国家安全保障会議)が設置されている。米大統領に直結する最高軍事諮問会議であり、国防総省や国務省よりは上位に位置している。

 同じものを日本の内閣府内に設置すれば、米政府の最高軍事秘密情報も、米NSCのカウンター・パートナーとして入手することが可能になる。国防総省から防衛省に流れていた軍事情報を、日本版NSCを設置すれば米NSCから入手できる訳である。