大西宏(ビジネスラボ代表取締役)

 新聞メディアは、ニュースはインターネットでも、テレビでもいくらでも得ることができる時代のなかで、なぜ新聞なのか、どのような存在意義、新聞を購読する価値がなになのかを再構築する努力よりも、目先の利益で、軽減税率適用を働きかけ、政権の御用新聞となる道を選んだようです。

 軽減税率の適用です。読売新聞が先頭にたって、新聞業界が求めてきたものです。
 官僚的な理屈としては、ヨーロッパでも新聞は軽減税率が適用されているので、日本だけが特別なことをしているわけではないということですが、そもそも日本の新聞社は特殊です。放送にも資本参加し傘下におく、アメリカでは禁止されているクロスオーナーシップであり、しかも不動産事業など多角化し、プロ野球球団まで持っているのです。

 財政の健全化のためには消費税増税が必要だと主張しておき、自らは逃げたのですから、口先だけのご都合主義で、いい加減だというだけでなく、それは権力に借りをつくり、ジャーナリズムとしては自ら死を選んだに等しいのです。

 しかも、日本の特殊なサービスである、宅配だけの適用というのも奇妙な話です。橋下市長が、市長時代に、皮肉たっぷりに新聞記者に質問を投げかけ、記者が返答に困り、しどろもどろになったようですが、それこそ、もう自ら正論を主張できなくなってしまっている証拠です。


 池田信夫さんの批判はさらに辛辣です。新聞業界は、200億円で買収されたことになると。その通りです。

  新聞の軽減額はたいしたものではない。全国の日刊紙を合計しても200億円ぐらいで、政府が新聞を「買収」するコストとしては安いものだ。2016年1月からの通常国会では野党が、矛盾だらけの軽減税率について激しく批判するだろうが、「賄賂」をもらった新聞は政府を批判できない。何しろ最も理屈に合わない軽減対象が新聞なのだから。


 そして、新聞社にとって不幸なことは、なりふりかわまず「買収」されてしまったことは、新聞メディアへの信頼は揺らぎ、さらに新聞離れを加速させることにつながっていくのです。

 衰退から逃れるイノベーションには手をほとんどつけず、古い体質、古い仕組みのままで、現状維持をはかろうとしても、それはさらに悪い結果を呼びこむことになります。それは新聞メディアも批判してきたことではありませんか。そんな愚を新聞業界は犯してしまったのではないでしょうか。 
(「大西宏のマーケティング・エッセンス」より2015年12月17日分を転載)