児玉克哉(社会貢献推進機構理事長)

 どうやら新聞も消費税の軽減税率の対象となるようです。自民党と公明党は定期購読の新聞を軽減税率の対象とすることで合意したと報道されています。他国の状況をみても新聞などが軽減税率となっているところはかなりあります。文字・活字文化は教養や思想の形成に大きな役割を果たしているので、特別扱いということでしょう。

 ただ、活字業界においてこれまでの状況と最近、そしてもっと重要なことにこれからの状況は大きく異なる可能性があります。まず最も重要なことは、デジタル化の進行です。新聞社においても定期購読型の新聞の部数はどんどんと減っていっています。だからこそ、それを守るために消費税の軽減税率の適応を、という主張はわかるとしても、それくらいのことで問題が解決するような状況ではありません。おそらく次の5年で新聞の定期購読型、つまり宅配の日刊紙は部数をさらに減らすでしょう。これは軽減税率が適応されようとされまいと大きな影響はありません。
 これからは、新聞社もデジタル新聞、あるいは情報企業として転換を迫られます。ここでポイントとなるのは、宅配の日刊紙を持っている新聞社のデジタル情報の販売に軽減税率が適応されるかどうか、です。おそらく新聞社はデジタル新聞などにも適応されるべきという主張でしょうが、デジタル新聞はこれまでの新聞とはかなり形態が異なります。さらに異なっていくでしょう。つまり紙媒体上の情報ではなく、情報そのものを売るのですから、形態も自由にアレンジできます。こうなると、これまで新聞社ではなかった企業が提供する情報と何が異なるのかが分からなくなります。また一定の枠を当てはめると、これから新聞社が枠を超えて新たな挑戦をしなければならないのに逆に足かせとなる可能性もあります。

 私は、新聞への軽減税率の適応は、定期購読型の宅配新聞に限定しておいたほうがこれからの自由な発展を妨げないことにつながると思っています。新聞とインターネット、映像媒体との融合は大きな課題です。実はテレビ業界もこれから大きな変化が求められるでしょう。どんどんとインターネットとの融合が始まっています。新聞とテレビは大きな資本を必要とし、また許可制度が明確でしたから、新聞業界、テレビ業界を確定するのが比較的に容易でした。しかしインターネットの世界はそうはいきません。どんどんと新たな業者やシステムが入ってきます。従来の新聞業界やテレビ業界もそうした仕組みにも入っていくしかなくなるでしょう。

 2%の軽減税率で、業界の変化が遅れることのほうが問題になるのではないかと思っています。新聞だけでなく、書籍の分野もそうです。デジタルブックは、想定されたようなデジタルブックの特別な端末によるものではなく、スマホで対応する形で普及しそうです。インターネット上の書籍や記事などと、従来の書籍や新聞記事とに明確な線引きをすることは不可能になっています。ヤフーニュース個人などは、独立した形での新たなメディアといえます。デジタルの新聞記事との明確な線引きはまずできません。しかし、時代はこうした形式の新たなメディアも必要としています。インターネット時代だから出来ることでもあります。

 軽減税率を利権的なものにしてはいけないでしょう。そうすることは、政府のメディアに対する介入にもつながる可能性があります。昨今、メディアの記事や姿勢に対しての政府の介入とも言える批判が問題となっています。軽減税率の適応などの要素が入ると、政府批判をするような「偏向した」メディアは対象外、といったことにもなりかねません。今の時代においては、メディアは時代の流れを読んだ挑戦と政府からの自由を確立するために、軽減税率などについては慎重な姿勢も必要です。