富澤一誠(音楽評論家)

 今年で66回目を迎える「NHK紅白歌合戦」のニュースを時系列で追ってみることにする。

 11月26日、今年の紅白歌合戦の出場歌手、司会者が発表された。毎年この瞬間を楽しみにしている人も多いと思うが、このリストを見ての私の感想は以下の通りである。

 まずはピンとこない、ということ。紅白と言えば毎年テーマを打ち出すものだが、「ザッツ、日本!ザッツ、紅白!」というテーマが理解できない。要は何がメインなのか? 何をめざしてやろうとするのか? まったくわからないということ。おそらくそれは今年を代表する歌がなかった、ということにもよるが、そうだとしたら、それをカバーするような企画が欲しいものだ。

 出場歌手のラインナップに関しては、事前の予想では演歌勢が減るだろう、ということだったが、意外や意外、減るどころか増えていた。これはどういうことか?理解しがたいことだが、三山ひろし、山内惠介という若手演歌歌手が選ばれていたことは評価ができる。やはり若手を起用しないと活性化がおぼつかないからだ。片や、森進一、和田アキ子というベテランが今年も残っていたことには正直言って「?」という感じがした。

 復活組ではX JAPANや特別枠での小林幸子も今さらという感じで「?」。初出場のBUMP OF CHICKEN、Superflyもなぜ今なのか?で「?」。はっきり言って、出てもらうには遅すぎたと言うしかない。

 一方、落選組では、ももいろクローバーZを今年なぜ落としたのか? 実績を考えればこれまた「?」と言うしかない。それより私が理解できないのは、これまで出場回数15回を誇るDREAMS COME TRUEがなぜ選ばれなかったのかということ。7月にリリースしたベスト・アルバム「DREAMS COME TRUE BEST!私のドリカム」は100万枚に届く勢いでロングセラーを続けている。ということは大衆の支持がドリカムにはあるということだ。にもかかわらず、選にもれたとは「?」である。
ゲスト出演で「ありがとう・今」を熱唱する歌手
、森進一=12月19日、帝国劇場(撮影・今野
顕)

 初出場のゲスの極み乙女。はナイスな抜擢と言っていい。惜しむらくは今年の新人では最も売れた部類に入る「あったかいんだからぁ♪」のクマムシは“応援ゲスト”ではなく正統枠で選んでほしかったという気がした。

 いずれにしても、紅白出場歌手の発表というニュースを知って、私が感じたことは、「?」だった、ということ。

 12月4日、森進一が歌手生活50年でけじめをつけて紅白卒業へというニュースが流れた。北島三郎の先例もあるのでびっくりはしなかったが、やはり遅きに失した、というイメージはある。というのは、いくら実績のある大物歌手とはいえ、ここ数年間は「昔の名前で出ています」で、なんであの人がまだ出ているのか?というイメージを誰もが抱いていたからだ。個人的に私は森進一の歌が好きだ。カラオケでは歌い続けている。だからこそ、引き際は美しく散ってほしい、と思っていた。「昔の名前で出ています」ではそれこそ森進一の名前が泣くというものだ。

 北島三郎、そして今回の森進一の紅白卒業を他人事とは思えない大物歌手も何人かいるはずだ。昔の名前で昔のヒット曲をいつまでも歌っていていいのか?と私は思う。