児玉克哉(社会貢献推進機構理事長)

 かなりの長期にわたって日韓関係は冷え込んだままです。特に朴大統領になってからは冷戦に近い状態が続いています。日韓間にはいくつかの課題がありますが最も重要視されているのがいわゆる従軍慰安婦問題。この慰安婦問題の「妥協点」を探り、解決へと導くために、安倍首相は岸田外相に対して、年内に韓国を訪問する方向で調整するよう指示したことが報じられています。年内といえば残すところ1週間。さすがにお互いに大晦日あたりは外したいでしょうから、ほんの数日で訪韓ということになるのでしょう。急な展開です。

 朴大統領の任期は2013年2月25日から5年間です。来年の2月には残りは2年間。残り1年近くになれば、レームダック状況になります。こうした難問はレームダック状態の政治家は解決できません。ですから可能性があるとすれば、来年中に解決に一気に持っていくしかありません。このままであれば、朴大統領は日韓関係を冷え切ったままにさせただけで、成果を残さず、経済を冷え込ませてしまったということが残るだけになってしまいます。なんとか成果を出したいところでしょう。

 まずは12月17日に韓国のソウル中央地裁は朴大統領への名誉毀損容疑で起訴されていた加藤達也産経新聞前ソウル支局長に無罪判決を言い渡しています。そもそも起訴自体がありえないようなケースですから、無罪は当然ではありますが、これも韓国政府から関係をこれ以上崩したくないというメッセージのようです。司法と政治とは別々のはずですが、韓国ではそうした建前も崩れているようです。判決に先立って、李裁判長は、韓国外務省から法務省に宛に「善処を望む」という要望が提出されたことを明らかにしています。韓国政府は日韓関係の改善を求めている、ということです。その後、ソウル中央地検は控訴を断念しています。これも政治的な匂いがします。

 また、12月23日には、1965年の日韓請求権協定が「違憲」だとする訴えに対して、韓国憲法裁判所は却下の決定を下しています。日韓関係での韓国での裁判で、韓国の側が負けるという事態が続いています。
従軍慰安婦問題の決着を目指す外務省局長協議を前に、記者団の質問に答える尹炳世外相=12月27日、ソウルの韓国外務省(共同)
 ただ、これを韓国が日韓関係の改善のために「折れつつある」とみるのは早計に過ぎるでしょう。むしろこれを取り引き材料として、慰安婦問題での日本側の譲歩を引き出そうとしているともみえます。韓国のユン・ビョンセ外相は従軍慰安婦問題について、「もう少し待ってもらえれば、結果を報告する時が来るだろう」と早期解決に向けた楽観的見方をしめしています。

 水面下ではかなりの交渉があるのでしょう。ただどのような妥協案があるのかはまだ不明です。

 韓国は、慰安婦問題には日本政府が関わっており、政府が謝罪し、補償することが必要という態度を崩していません。日本も1965年の韓日請求権協定で慰安婦問題は法的に解決済みであることと、慰安婦問題は民間での問題であり、日本政府は関わっていないという主張を変えることもないようです。法的な責任ではなく、人道的な見地から補償をしていくという姿勢です。これでは議論は平行線。どちらか、あるいはどちらもが折れなければ問題は進展しません。

 私は妥協点を探すとすれば、以下のような案になるのではないかと考えています。

*政府の代表としてではなく、安倍首相が謝罪し、人道的な立場から補償をしていく。
*日本政府が従軍慰安婦にどのように関わったか、関わらなかったかについては、さらに 調査研究を進めることで合意する。そのための研究費用を日本政府が拠出する。
*日韓の交流を促進するための基金を作り、学術交流、文化交流、経済交流をさらに進める。

 つまり、焦点をぼやかしながら、お互いの主張が異なることを認め合い、問題解決への努力をすることで合意するというものです。

 韓国側はこれで妥協しにくいでしょうが、安倍首相の(個人としての)真摯な謝罪があることを条件に飲むかもしれません。

 これでもお互いに妥協できないとなると、 お互いに主張しながら時間が経つというこれまでと同じ平行線を続けるしかないのかもしれません。いずれにしても、この1~2ヶ月で一気に事態が動くかどうか。微妙なところです。韓国が二つの裁判での「配慮」を主張して、大幅な妥協を日本に求めるなら、朴大統領の政権下では解決はなくなるかもしれません。雪解けムードのなか、一気にお互いが妥協点を見つけるという可能性もあります。安倍首相が保守に属し、安定政権を築いている状態ですので、安倍首相は妥協できるだけの余裕を持っています。基本的な主張を曲げない範囲での妥協で、とりあえずの合意がなされ、日韓関係は雪解けの2016年になるかもしれません。