西村眞悟(前衆院議員)



 本日の産経朝刊にある田久保忠衛さんの「正論」は、この度の参議選挙の結果を、的確に、かつ、見事に、「国際政治の流れに沿った新生日本の歴史的うねりが始まった」と大観され、安倍総理に歴史的使命を果たせと促されている。

 さらに、「危険な政治家はどちらか。参院選で国民は真贋を見分けたと私は考えている」と田久保さんは述べられている。その通りだと思う。

 但し、沖縄は違う。沖縄は、まことに残念だ。「危険な政治家」が選ばれた。参院選挙は、「内政問題」だと思い込んでいたら危険だ。我が国、特に沖縄は、「内政干渉」に曝されているからだ。そして、沖縄を奪おうと目論む敵が喜ぶ選挙結果が出たのだ。田久保さんは、今日の「正論」で、直ちに、集団的自衛権行使の憲法解釈変更を行うことと、日本版NSC(国家安全保障会議)を設置すべしと書かれている。全く同感だ。
 
 しかし私は、沖縄の選挙結果を見て、NSCと同時に「スパイ防止法」の制定も急務中の急務だと思う。何故なら、例えばNSC一つをとってみても、これが機能するか否かは、NSCの決定過程に外国の干渉がないということと、決定過程の内部情報が敵に筒抜けになっていないということが確保されていることにかかっている。しかし、現在、日本は「スパイ天国」で、その保障はどこにもない。安倍内閣と与党内さらに野党を含む全政界が外国のスパイ活動のターゲットにされ、その内部にスパイが「うようよいる」ならば、やっと始まった「新生日本の歴史的うねり」が如何に歪(いびつ)に変容させられるか分からないではないか。

 この度の参院選挙においても、パチンコ店の駐車場フェンスに政党のポスターが貼られていた。しかし、目に見えるのはこれくらいで、外国勢力が如何に我が国の選挙に関与しているか、スパイ防止法がないので全く分からない。
 
 我が国を弱体化させる急所は沖縄と原発である。そして、反基地と反原発の街頭パフォーマンスを観ていて感じたのは、日本人的ではないということだ。

 スパイ防止法の制定は、我が国の再興のために死活的に重要である。

 最後に、沖縄についての思い出と今月初旬に沖縄を訪問した時のことを書いておきたい。

 昭和四十三年八月の末、二十歳の私は、一人で北海道西北端の稚内から船に乗って樺太に最も近い島である礼文島に行った。その礼文島の宿で沖縄から来た同年代の男と泊まりあわせた。日本最北の島で日本最南の島から来た男に会ったのだ。「沖縄って、どんなとこや」と私は尋ねた。「日本であって、日本でないとこだ」と男は答えた。まだ、沖縄は本土復帰前だった。

 北海道から大阪に戻ってしばらくすると、新聞に、沖縄のアメリカ軍基地の前で演説をしていた社会大衆党のちょび髭を生やした安里積千代という小柄な初老の政治家が、銃剣を構えたアメリカ兵に押されてのけぞっている写真が掲載された。沖縄では、未だにアメリカ兵が銃剣を構えて島民を蹴散らすのかと怒りがこみ上げると共に、敗戦以来未だに続く沖縄県民同胞の苦労を思った。その年の末、大阪で沖縄復帰を求める集会があり、弁士にその安里積千代さんが沖縄から来た。登壇した積千代さんが、小柄な体からは予想できない大声を出した。そして、迫力ある演説をした。我々は、断じて沖縄を取り戻そうと思い決した。
 
 以上は、昭和四十三年のことである。

 本年(平成二十五年)七月一日、私は沖縄に行った。集会の講師を頼まれたからである。目的はもう一つあった。参院選挙で比例区の中山恭子さんへの投票依頼だ。沖縄に着いてから、沖縄の友人から、選挙区選挙の立候補者が、あの安里積千代さんの孫だということを知った。沖縄返還に燃えた二十歳のころの記憶が甦った。そして、集会では、比例区は中山恭子さんを頼み、選挙区では安里さんを頼んだ。

 この集会のおおよその模様は既に本時事通信で書いたが、集まった人々が、安里さんの名前を私から聞いた時の反応のなかに安里さんの敗因があるように思う。この集会に集まった人々は、安里さんの名を聞いてしらけていた。何故なら、この人々は、普天間基地を速やかに日米合意通り辺野古に移すべきだという考えを持っていたからだ。ところが、自民党沖縄県連は、辺野古移転を明言せず、安里さんも明言しない。従って、ここの人々は沖縄の自民党は、「自由共産党」だと苦笑しながら言っていた。

 つまり、沖縄では自民党の候補者である安里さんも、「反基地」を言っていたのだ。これでは、「反基地」運動の本家本元に勝てるはずがない。安里さんは、敵(支那)の狙いは何か、沖縄を守り日本を守るためには、何が必要か、これを明確に訴えるべきであった。私の接した沖縄の皆さんは、それを待っていた。自民党と安里さんが、それを語らなかったので、しらけていたのだ。

 とはいえ、沖縄県民の日本人としての本音を封殺し、あたかも「特殊な島」であるかのような情報のみを発信する沖縄のマスコミは、何にコントロールされているのか。天皇皇后両陛下の沖縄行幸に際し、七千名以上の県民が日の丸と提灯を持って両陛下をお迎えしたことを一切報道しない沖縄のマスコミは、事実を伝えるマスコミではなく、一種の「政治運動の機関誌」である。では、その「政治運動」の本体は何処にあるのか。これらを、スパイ防止法によって突き止めねば、我が国の危機は止めどなく進行する。もはや、一刻の猶予もならない。