「韓国にとって、半世紀の日韓関係とは一体何だったのだ?」日韓国交正常化50年の今年、少なからぬ日本人が韓国の対日観を改めて訝しんだ。朴槿恵政権は対中傾斜を強めた一年だった。その一方で日本の世界文化遺産登録を批判し、妨害した。慰安婦問題は28日の日韓外相会談で妥結を目指すことになったが、朴政権がこの間、醸成してきた日本の嫌韓感情は、たとえ慰安婦少女像が撤去されても、簡単には払拭できないだろう。今年、両国政府は443件の日韓50年記念行事を承認したが、両政府主催の祝賀行事はついに開けなかった。

韓国発でいまだに揺れる? 日韓国交正常化の普遍性


 今月23日、韓国憲法裁判所は元徴用工遺族の訴えを却下した。訴えは1965年の日韓請求権協定そのもの俎上に上げ「請求権協定は違憲」としていた。韓国司法は近年、日韓の外交案件に関わる司法判断を続々と出していただけに、今回の却下は「日本への配慮か」と観測されている。

 戦後処理に関する二国間問題を国内法で覆す-国際的には非常識な対日攻勢に日本側は強い違和感を抱いてきた。安倍政権が今春、外交青書の韓国に関する記述から「価値観を共有」を削る背景にもなった。

 慰安婦問題も背景には韓国司法の違憲判決が横たわる。2011年、憲法裁判所が出した「慰安婦問題で韓国政府が努力しなかったのは政府の不作為で憲法違反」との判決だ。元徴用工問題も韓国大法院(最高裁)の「個人の賠償権は日韓請求権協定外」との判断(2012年)を根拠に、下級審で日本企業の敗訴が続き、現在も上告中で大法院の判断待ちだ。

 28日の外相会談も、違憲判決を背景にした協議だ。韓国側は「韓国の国民が納得できる水準」を日本に迫ることになる。

「日本との政治和解はしていない」


 今年は各種の日韓シンポジウムが開かれた。代表的な見解はこうだ。韓国側からの現状分析-

 「国交正常化は政治的妥協の産物だったが、真の日韓和解はまだ実現していないのだ。当時、確かに韓国は日本の経済協力資金で国土の開発資金を得た。しかし、日本も国交正常化で韓国という市場を得たではないのか。両国間にはわだかまる感情と歴史認識問題が残っている」(韓国の研究者) 
今年8月14日、在韓日本大使館の前では慰安婦問題などの抗議集会が開かれ、警察による厳重な警備が行われた=ソウル(早坂洋祐撮影)
今年8月14日、在韓日本大使館の前では慰安婦問題などの抗議集会が開かれ、警察による厳重な警備が行われた=ソウル(早坂洋祐撮影)
 日本側は日韓関係をこんな風に捉える-。

 「半世紀を経て日韓関係は構造的な変化している。半世紀前の韓国は朝鮮戦争後の混乱期にあり、経済的に日本に従属的な関係にあった。しかし韓国は高度成長を経て先進化し、GDP2万8000ドル(昨年実績)となった。両国関係は垂直から水平的な関係に変わってきた」(日本の研究者)

 ただ、韓国側の発想には根本的に日本側と相容れない認識がある。それは日本統治に対する評価で、日本は帝国主義時代の国際法で合法だったとするが、韓国は非合法の侵略としている点だ。従って韓国側には「日韓併合は侵略」「違法だった併合を日本が賠償するのは当然」とする発想がある。

 日韓基本条約、請求権協定で「完全かつ最終的に解決」とする日本に対し、韓国には「承伏できない」との不満が渦巻く。これがさまざまな議論に影を落とすのだ。韓国における請求権をめぐる訴訟も韓国側の「解消されないフラストレーション」による。朴槿恵大統領が日本に求める「正しい歴史認識」の背景にはこの認識対立がある。

2015年の朴外交と安倍外交


 2015年日韓関係は停滞のなかでの“にらみ合い”が続いた。朴外交は対中傾斜が目立ち、安倍外交は着実な日米関係の前進が特徴となった。

 韓国は安倍晋三首相の戦後70年談話に神経を尖らせ、「植民地支配」「侵略」「痛切な反省」「おわび」のキーワードの有無を注視、一方で日米関係強化に高い関心を示した。日米ガイドラインの合意や安倍首相訪米での議会演説の内容を注目した。一方で北東アジアの安保環境に資する安倍政権の安全保障関連法案には強い警戒感をみせ、韓国メディアは日本の野党と同様の「戦争法案」のレッテルを貼り安倍政権を批判した。

 日本からみると、朴政権の対日外交は韓国の軸足のブレからくる日本に対する牽制のように映った。

 朴槿恵政権は“米中バランス外交”を標榜してきたが、実際には米中の狭間で揺れていた。韓国は米国の懸念をよそに中国のアジアインフラ投資銀行の創立メンバーに入ったが、米韓関係の後退を懸念する声が絶えなかった。

 11月、日韓首脳会談が実現した背景には米国からの再三の要請があった。韓国は譲歩し、慰安婦問題の進展なしでの首脳会談を決断した。経済界からも対日改善への要求のある朴外交は日本に対し和解ムードに切り替えたようにみえる。4月の総選挙後は韓国政界の関心は次期大統領選に移る。朴政権にとって大きな政治決定は年内が望ましかった。

 慰安婦問題について、日本の認識は「ボールは韓国にある」(外交筋)とみられている。反日世論の抵抗がより厳しいからだ。この慰安婦協議は、正常化から51年目に入る日韓両国の本音が問われることになる。

(久保田るり子)