佐藤健志(作家・評論家)

 「スター・ウォーズ」シリーズの10年ぶりの新作として、鳴り物入りで公開された「フォースの覚醒」は、予想通り、ないしそれ以上の大ヒットを飛ばしている。内容にたいする評価も、今のところ好意的なものが大部分を占めているようだ。

 今回の新作は、シリーズの生みの親であるジョージ・ルーカスの手を離れて製作された最初の「スター・ウォーズ」映画となる。現に「フォースの覚醒」の物語は、ルーカスが思い描いていたものとはかなり異なると報じられているが、まずはめでたしめでたしの結果になったと言えよう。

新作の微妙な立ち位置

 しかし「スター・ウォーズ」は、一話完結形式のシリーズではない。それぞれの映画は「エピソード」と呼ばれ、三つのエピソードによって、銀河の覇権をめぐる物語の大きな区切りがつく。つまりは三部作形式なのだが、シリーズ全体は三つの三部作、言い替えれば九つのエピソードによって成り立つとされてきた。
カイロ・レン/(C) 2015Lucasfilm Ltd. & TM. All Rights Reserved
「スター・ウォーズ/フォースの覚醒」 (C) 2015Lucasfilm Ltd. & TM. All Rights Reserved
 「フォースの覚醒」はシリーズ七作目にあたるので、最終三部作の一作目ということになる。ところがこの最終三部作、シリーズの中できわめて微妙な立ち位置にあるのだ。これをどう処理するかで、今後の展開や評価も大きく変わってくるだろう。

 ならば、最終三部作の立ち位置を微妙にしている要因は何か? 今までのエピソードを順番に列記すれば、答えはたちどころに明らかとなる。

〈三部作・その1〉
 1977年 エピソード4 「新しい希望」
 1980年 エピソード5 「帝国の逆襲」
 1983年 エピソード6 「ジェダイの帰還」

〈三部作・その2〉
 1999年 エピソード1 「ファントム・メナス」
 2002年 エピソード2 「クローンの攻撃」
 2005年 エピソード3 「シスの復讐」

 公開年とエピソード番号のずれに気づかれただろうか? そう、「スター・ウォーズ」は物語の前後が逆転する形で製作されてきたのである!

 エピソード順に並べた場合、シリーズのあらすじは以下のようになる。

 繁栄を誇る銀河共和国が衰退、邪悪な銀河帝国へと変貌する(エピソード1~3)。しかし銀河帝国も、共和国の理想を信じる正義の反乱軍によって打倒される(エピソード4~6)。

 ところが製作順に並べた場合、あらすじはこうなってしまう。

 邪悪な銀河帝国が、共和国の理想を信じる正義の反乱軍によって打倒される(三部作・その1)。しかし繁栄を誇る銀河共和国も衰退、銀河帝国へと変貌する(三部作・その2)。

 「フォースの覚醒」は、エピソード順で言えば、銀河帝国にたいする反乱軍の勝利を受けて始まる。だが製作順で言えば、銀河共和国にたいする帝国の勝利を受けて始まらねばならないのだ。