常見陽平(千葉商科大学 国際教養学部専任講師)

 年末である。今年もNHK紅白歌合戦が迫ってきた。楽しみで仕方がない。矢沢永吉や中島みゆき、サザン・オールスターズなどいかにも紅白に出ない人の出演、昨年のような海外から中森明菜出演などの夢企画は少なめだけど、今年は楽しめるラインナップなのではないかと思っている。そして、これぞ国民的音楽番組なのではないかと思ったのだ、今の音楽シーンにとって。

 最初に今年の紅白の見どころについて、一音楽ファンとして語らせて頂こう。中年ロッカー、そしてプロレス者はこの布陣にNHKの本気と、気迫、さらに言えば狂気のようなものを感じるからだ。今年の紅白は闘いである。なんせ、トリのマッチさん(さん付けで表記しないといけない)と聖子ちゃん(もう中高年だが、安室奈美恵がアムロちゃんであるのと一緒で聖子ちゃんは、聖子ちゃんなのだ)の対決に目が行く。マッチさんは「ギンギラギンにさりげなく」、聖子ちゃんは「赤いスイートピー」で勝負してきた。80年代アイドル頂上決戦である。昔の格闘技で言うならば、これはヒョードル対ミルコなのだ。マッチさんは昨年、特別出演した中森明菜を背負っている。聖子ちゃん派対明菜派という、80年代の女性アイドル歌手イデオロギー闘争はここで、時を経て代理戦争が行われることになる。聖子ちゃんは昨年の明菜、そして今年のマッチさん、さらにはトリという重責と闘わなくてはならない。だから「赤いスイートピー」という最終鬼畜兵器を紅白に投下することになった。

 さらに追い打ちをかけるように、白組の、そして番組のトップバッターは郷ひろみで「2億4000万の瞳」である。かつての交際相手であることは言うまでもない(若い人は知らないか)。聖子ちゃんが破局会見をしたのは1985年の1月だ。約30年の時を経て、お互い数々の恋愛の紆余曲折を経て、再度対決である。このカードを組んだNHKに決意を感じるのである。

 このトップバッター郷ひろみ、トリにマッチさんという布陣は、現状、ジャニーズ勢に対する闘魂伝承、いやジャニ魂伝承の意味もあるだろう。存在自体が中年サラリーマン的、万年中間管理職的なV6、TOKIOがこれでどれだけ奮起するか、やはり紅白において万年前座枠であり、もはやプロ若者化しているSexy Zoneとどんな化学反応が起こるか、関ジャニ∞が嵐、SMAPを超えていくキッカケになるか、見ものである。

 著作権問題があった森進一の「おふくろさん」、BPO問題があった和田アキ子が「笑って許して」を歌うなど、意味深な展開も。他にも坂本冬美と徳永英明の歌唱力対決、レベッカ、星野源、Superflyの投入、X JAPANがバラード曲ではなくメドレーで参加するなど、見どころはたくさんある。
応援枠での出場が決まったお笑いコンビ、クマムシ
 出演者もスタッフも、そして視聴者も、死人が出るのではないかと思うほどの気迫を感じる。