河合雅司・産経新聞論説委員

 晩婚化が進んでいる。1980年の平均初婚年齢は男性27.8歳、女性25.2歳だったが、2012年は30.8歳、29.2歳に上昇した。第1子出生時の母親の平均年齢も26.4歳から30.3歳に上がった。晩婚に伴って晩産化も進んだのだ。

 というのも、「できちゃった婚」という言葉でも分かるように、日本では結婚と妊娠はたとえ順序が逆になってもワンセットだからだ。日本は「結婚しなければ子供が生まれにくい国」である。
 1980年と2010年の25歳女性の未婚率を比べると、41.0%から74.6%へと激増している。30年前には多くが子供を産んでいた年代が、結婚していないのだから日本の少子化が進んだはずである。

日本は「不妊大国」

 なぜ、晩産が少子化を招くのか。主な理由は2つある。1つは、出生力が低下することだ。医学的には男女とも年齢が上がるとリスクが大きくなる。女性が自然に妊娠する力は30歳頃から低下する。35歳前後からは流産の確率が高くなり、母子に与える影響も生じやすくなるとされる。

 国立社会保障・人口問題研究所の「出生動向基本調査」(2010年)によれば、不妊検査や治療経験のある夫婦は16.4%。6組に1組が悩んでいる計算だ。子供のいない夫婦に限れば28.6%に跳ね上がる。日本は「不妊大国」でもある。

妊娠知識の教育急げ

 もちろん、自らの意思で出産を遅らせている人の選択は尊重されるべきだ。問題は、知識がないがために“予期せぬ不妊”になった人が少なくないことだ。まずすべきは妊娠知識をきちんと教育し、「若いうちに結婚、出産をしておけばよかった」と後悔する人を減らすことである。

 もう1つの理由は、妻が30代後半になって第1子を産むのでは、なかなか「もう1人」とはならないことだ。末子が成人になったときの自分たちの年齢を考えると、踏み切れないということだろう。

 社会全体でみれば、1組の夫婦から最低2人が生まれなければ、出生数減少は止まらない。3人以上生まれて、初めて増加に転じる。少子化対策の観点からも、晩婚の歯止めに取り組む必要がある。

 どうすればよいのか。最近は、「若いうちに卵子を凍結保存し、将来の不妊リスクに備えたい」との考え方が、健康な独身女性にまで広がっている。だが、保存をしておけば「将来の妊娠」が約束されるわけではない。

 医療の進歩に過度の期待を寄せるより、産みたいときに安心して産める環境の整備にこそ力を入れるべきだ。

 晩婚や晩産は、社会要因が複雑に絡み合って起こっている。問題を一つ一つ取り除いていくしかない。

 最も急ぐべきは、パートナーとなる男性の雇用、収入を安定させることだ。

 国税庁の平成23年分「民間給与実態統計調査」によれば、20代後半男性の平均年収は367万円、30代前半が434万円だ。一方、非正規雇用が増えているが、厚生労働白書は年収300万円未満の既婚率は1割に満たないとしている。プロポーズしたくともできない男性を減らしていかなければならない。

 女性の職場環境の改善も急がれる。結婚や出産によって仕事を辞めざるを得ない女性はいまだ少なくない。希望する人が働き続けられるよう、保育所などを整備するのは当然だが、男性も含め在宅勤務や復職支援など社会制度も改める必要がある。男性の育児参加の促進も不可欠だ。

“世話焼き”の復活を

 出会いに恵まれない人も多い。ネットが普及して、出会いに関する情報量は増えたが、「もてる人」と「もてない人」の二極分化も生んでいる。2、3回の失敗で自信喪失になっている人もいる。

 かつて近所や職場には縁談を勧める“世話焼き”がいたが、こうした人の復活が望まれる。同時に若い男女が自然に交流できるボランティアなどの仕組みを制度化し、出会いの場を創出することだ。

 そして、何より重要なのが「家庭を築く楽しさ」を社会全体で再確認することである。結婚や出産の厳しさや苦しさばかりを強調する情報があふれ続けたのでは、若い人が結婚や出産を尻込みするのも当然だ。

 結婚や出産の体験者である“大人”たちが、「子供のいる家庭」の楽しさや充実感を若い世代にしっかり伝えることこそ、いまの日本に最も求められていることである。