吉田潮(ライター・イラストレーター)

 「今年はずいぶんと気張ってんなぁ」というのが素直な感想。紅白歌合戦である。

 ちょっと前まで、雲行きはかなり怪しかった。タモリに断られて総合司会が決まらないわ、ヒット曲もなく、好感度の低い和田アキ子の出場にブーイングが起きるわ、アイドルなのに生でもしっかり歌って踊る稀有な存在のももいろクローバーZが出場しないわで、ケチがつけられることのほうが多かったのだ。
ところが、人気番組「あさイチ」がこの暗雲を吹き飛ばすことにかなり貢献した。白組司会にイノッチ(V6井ノ原快彦)が決まって以降、あさイチが総出で紅白宣伝に乗り出したからだ。

 12月11日放送では「紅白で年末が楽しくなる」という特集を組んだ。時期尚早&番宣臭に笑止千万の印象が強いかと思いきや、盛り上げブースターとしての役割を見事に果たしたと思う。

 観たことも聴いたこともない若手演歌歌手にクローズアップしたり、今回のイメージロゴを手掛けた俳優の田辺誠一を紹介したり。田辺、ドヘタな絵が売りのはずが、すっかりアーティスト扱いに。片岡鶴太郎みたいに芸術家気取りになっていくのだろうか。一抹の不安を感じないでもない。もしかしたらテレ朝の散歩番組(現在は高田純次)レギュラー獲得を視野に入れてのことか。だとしたら、それはそれで歓迎するが。



紅白歌合戦の総合司会を務めるNHKの有働由美子アナウンサー、紅組司会の女優・綾瀬はるか
紅白歌合戦の総合司会を務めるNHKの有働由美子アナウンサー、紅組司会の女優・綾瀬はるか
 もちろん、メインキャスターのイノッチと有働由美子アナが紅白でも司会を務めるワケだから、あさイチでも宣伝しない手はない。このふたりが熱を持って宣伝するかと思いきや、11日の段階では何も決まっていなかったために、案外低体温かつ他人事。冷めた感じが逆に面白く映った。その代わり、悪ふざけに近い熱を帯びて登場したのが、近藤泰朗アナである。

 身頃半分が白、半分が赤で、肩には文鳥を載せているというトンチキなスーツで現れた近藤アナ。紅白を盛り上げるために、激しくタンバリンを打ちまくる姿に視聴者も反応したようだ。これだけ張り切っている割に、紅白には呼ばれていないという近藤アナに、視聴者が同情を寄せる結果に。

 さらに25日放送では、再び近藤アナが(もちろんトンチキスーツで)登場し、「紅白直前最新情報」を組んでいた。イノッチ&有働アナの当日の衣装候補を紹介したり(正直どうでもいい)、紅白公式アプリや副音声の裏紅白を解説するなど、熱病の如く宣伝&喧伝。高視聴率の朝ドラ&あさイチにすがりまくるNHKの必死さ、それなりに功を奏したようでもある。

 最近、NHKがやらかしがちなのは「本編よりも番宣が話題になる」という痛し痒しの状態だ。あさイチを観ている人はすでに満腹感が増している。そして、もうひとつトドメを刺してしまう番宣番組があった。 

 26日放送の「データが生んだ!紅白The平均ソング 日本人が”なぜか”気持ち良くなる歌をデータで探るスペシャル!」である。過去の紅白で歌われた曲の歌詞をデータ化し、各時代ごとの平均ソングを自動作曲ソフトで作るという主旨だった。 

 これが実に面白かった。新奇性と意外性に富んだ試みで、企画力に拍手を送りたいほど。つまり、枠を超えない演出で飽きられ始めている紅白の本編よりも、俄然興味を引いたワケだ。

 すでに私も満腹状態に近づいている。紅白の番宣番組が優秀すぎて。周辺情報だけで満足し、本編への興味を失っているという…。NHKの気張ってる空気感はちゃんと伝わっているのだが。紅白以外の番組スタッフが優秀ということを改めて教えてくれた気もする。