岡崎研究所

 6月29日付の米ニューヨーク・タイムズ紙は、社説で、米国と中露の間で宇宙戦争が起きることを防止するために、欧州提案の宇宙活動に関する行動規範の作成に中露が参加することが望ましい、と述べています。

 すなわち、宇宙が危険な対決の場になりつつある。米国は宇宙での中国やロシアなどとの対決に適切な準備ができていないと米国防関係者は述べる。具体的には、国際宇宙ステーションなど地球を回る何千という衛星の安全について懸念が出ている。米国は長い間宇宙で圧倒的な優位を保ってきたが、今や多くの国が衛星を飛ばしている。
 米国防省は、衛星を通じて、戦場で敵の居場所を確定し、軍縮条約の遵守を確認し、あるいはICBMに対し早期警戒を確保している。

 冷戦時代に米ソは限定的な衛星攻撃兵器(ASAT)を開発したことはあるが、今や、中国が、そしてロシアが、活発に電波妨害、レーザー、サイバー武器などを開発している。2007年に中国が初めてASAT実験に成功したが、これが転機になった。更に、中国の専門家が台湾危機の際には中国は米の早期警戒衛星を撃ち落とすだろうと述べたことで、疑念が一層強まった。

 宇宙戦争を防止するには、外交が必要だ。従来この問題を国際的に議論することを拒んできた中国が、米中戦略経済対話で、宇宙協力と衛星衝突回避について定期的に米国と協議することに合意した。今秋のオバマ・習近平首脳会談までに何らかの具体的な前進が見られれば有益だ。

 中国とロシアは、法的拘束力を持つ条約により宇宙での武力行使を禁止することを主張してきたが、専門家は検証が難しいとする。より実際的な方策は、米国とEUが推進している行動規範の作成に中露が参加することである。

 オバマ政権は、防御措置の開発への投資を増やすことにしている。関係者によると、ジャミング対抗措置などの開発のために、向う5年間に、追加的に50億ドルの予算が投入されるだろう。また国防省は高い強靭能力を持つ衛星を開発しようとしている。宇宙対決がエスカレートすれば、すべての大国が損をするだろう、と述べています。
出 典:New York Times‘Preventing a Space War’(New York Times, June 29, 2015)

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 今後の軍事フロンティアは、宇宙とサイバースペースです。米国の2015年国家安全保障戦略は、共有スペースのアクセス確保が重要であるとして、空と海の他、サイバーと宇宙について言及し、宇宙空間の平和利用を否定しようとする勢力に対応する必要がある、米国は行動規範の作成など宇宙での国際協力を拡大している、米国の宇宙システムへの攻撃に対する抑止技術も開発すると記述しています。中国の2015年国防白書は、「宇宙での競争」に触れ、中国は宇宙でのダイナミクスに遅れない、中国の宇宙資産を防護していくと述べています。

 6月22 - 24日の米中戦略経済対話では、宇宙に関する米中定期協議の開始について合意しました。良いことです。

 2008年、欧州は行動規範作りを提案し、その後、米国や日本なども参加し「宇宙活動に関する国際行動規範」の作成交渉を行っています。外務省によると、その中には、衛星衝突、スペースデブリのリスク低減、ASAT実験・行為の制約、通報・協議メカニズム等が含まれているようです。

 宇宙で圧倒的優位を持つ米国としては、中露が主張する法的拘束力を持つ条約の作成には、賛成できません。同時に、米国は、衛星防御措置の開発に乗り出しています。宇宙で攻撃、防御、両面での技術競争が起きることは避けられないように思われます。

 宇宙利用は、民生活動にも深く関係します。2012年に外務省も総合政策局に宇宙室を設置し、規範作りなど国際協力に当たっています。