スポーツ界に十代の新星が続々と登場した2015年、年の瀬に超新星が輝いた。
 高校生ながら、すでに男子バスケットボール日本代表候補に選ばれている八村塁選手だ。

 「最もNBAに近い日本人選手」と呼ばれる八村塁は、年の瀬に開催されたウィンターカップでも大活躍、明成(宮城)を3連覇に導いた。決勝戦では、土浦日大に第3クォーターまでリードを奪われながら、最終第4クォーターに明成は12連続得点で逆転、劇的な勝利を果たした。1試合34得点を挙げた八村塁がもちろんその中心を担った。これまで198センチと言われていた身長が今大会では201センチと報道されている。まだ伸びているのだろう。足のサイズは34センチだという。父親がベナンの人。甲子園を沸かせ、東北楽天に入団した野球のオコエ瑠偉選手、世界陸上で注目を浴びたサニブラウン・ハキーム選手と同じく、バスケット界にも外国人を父に持つ新しい星が登場している。
  
バスケットボール 全国高校選抜優勝大会最終日 男子決勝 明成―土浦日大 第シュートをブロックする明成・八村塁=12月29日、東京体育館
バスケットボール 全国高校選抜優勝大会最終日 男子決勝 明成―土浦日大 第シュートをブロックする明成・八村塁=12月29日、東京体育館
 ウィンターカップの初戦では、前橋育英を相手に明成は100対81で快勝。八村はこのうち30得点を挙げ、14のリバウンドをものにして空中戦を支配。明成を勝利に導いた。  これまでNBAにチャレンジした日本選手は、田臥勇太、富樫勇樹、ともに小さい身体を逆に生かした素早い動きやドリブル、鋭いパスワークを武器にしていた。八村は長身に加えてがっしりした身体、大きな相手にも当たり負けしない強さとたくましい身のこなしを持っている。

 長身を生かしてしなやかにレイアップ・シュートや豪快なダンクを決めるだけでなく、ミドルの距離、3ポイントのポジションからも高い確率でシュートを決める。抜群のシュート力が魅力だ。たくましく、しなやか。身体の背後にも目を持っているかのような大きさと器用さを兼ね備えている。日本にはこれまでいなかった、世界に通用する本格的なセンターだ。2013年9月にはアジアU16選手権で3位、エースとして日本代表を15年ぶりの世界選手権に導いた。2014年8月のU17世界選手権では大会の得点王に輝いた。 

 来春、高校卒業後は、アメリカの大学に進学を希望。すでに、NBAのスーパースターを輩出している上位ランクの大学に入学が内定したとの噂もある。どこの大学にせよ、アメリカのカレッジ・バスケットが次の活躍の舞台になりそうだから、順調に成長を重ねたら、八村本人が目標に掲げる「NBAでの活躍」はもう夢物語ではない。そうなれば、八村が描くもうひとつの夢、「2020年東京五輪でアメリカを倒すこと」も可能性を帯びてくる。

全国高校総体第7日 バスケットボール男子決勝 明成―桜丘明成・八村塁が豪快なダンクシュートを決める=8月3日、京都・ハンナリーズアリーナ
全国高校総体第7日 バスケットボール男子決勝 明成―桜丘明成・八村塁が豪快なダンクシュートを決める=8月3日、京都・ハンナリーズアリーナ
  2014年夏のU17世界選手権で日本代表はアメリカと対戦し、122対38で大敗した。八村は25得点を挙げてひとり気を吐いたが、チームはまったく歯が立たなかった。現段階で「打倒アメリカ」を語るのは非現実的なようだし、それはもちろん容易い挑戦ではないが、実現したら日本中がどれだけ沸き上がることか。想像するだけで熱くなる。

  八村塁がいれば、そして八村を中心に日本代表が劇的な変化を遂げれば、「いままで夢想もしなかった出来事が現実になる可能性だってある」と期待がふくらむ。実際、今年秋にラグビー日本代表がそれをやってのけた。ラグビーの快挙を5年後の東京五輪で男子バスケット日本代表がやってくれたら痛快だ。

  時代は大きく変わっている。浅黒い肌の日本人選手が、多くのスポーツの日本代表の中心で活躍する時代になった。同じウィンターカップの女子の部門には、オコエ瑠偉の妹・オコエ桃仁花(もにか)選手(明星学園2年)も出場し、活躍している。身長180センチ。今後の成長が楽しみだ。

  日本のスポーツ界はこうした新しい人材の出現に刺激を受けて、新たなうねりを巻き起こしている。この潮流は2016年以降もさらに加速するだろう。