大西宏(ビジネスラボ代表取締役)

 共産党が「天皇制」「自衛隊」「日米安保条約」といった点の違いは横におき、野党連合で選挙協力しようと呼びかけています。さすがに、民主党がそれに乗れば責任野党のポジションを失い、国民から即退場の審判を受けかねないので乗るとは到底思えませんが。

 大阪方式を国政でもやろうということでしょうか。大阪ではその倒すべき相手の自民党と、都構想をめぐる住民投票で共闘を行い、またなりふりかまわない自民党もそれに喜々として乗りました。呉越同舟とばかりに自民党の街宣車から共産党議員が演説し、共産党の街宣車から自民党議員が演説するという目を疑うような歴史を覆す出来事が起こったからです。さらに大阪では実質消滅している民主党が加わって、政治の退廃を感じてしまいました。

 ここまで共産党が路線転換をはかってきた背景で考えられるのは、党内に、党の生き残りへの危機感があるのではないかと感じます。確かに2013年の参院選、2014年の総選挙で、それまで退潮傾向にあった国会の議席は伸ばしたとはいえ、それは民主党凋落で行き先を失った批判票が共産党に集まった結果にすぎないからです。
「国民連合政府」構想アピールの遊説第1弾として街頭演説する共産党の志位和夫委員長=2015年11月1日、横浜市(酒井充撮影)
 おそらく、「国民連合政府」構想で責任与党としての現実を踏まえた路線を主張すれば、民主党からさらに議席を奪えるのではないかという読みがあるのでしょう。共産党による民主党狩りです。それと、もうひとつは、候補者を立てる余裕がなくなってきたのではないかという疑いです。

 共産党は政党交付金を受けていません。それでもやってこれたのは「しんぶん赤旗」が党を支える大きな資金源となってきたからです。しかし、「しんぶん赤旗」はウィキペディアによると、日刊紙の部数は過去10年で約36万部から約24万部に減少し、月2億円の赤字となっているとか。それでは台所が回りません。もし窮して政党交付金を受ければ、これまでの主張への厳しい批判が殺到します。

 おなじくウィキペディアによると、かつては40万人を超えていた党員も、今ではおよそ25万人程度にまで減ってしまったおり、衰退に歯止めがかかっていないようです。党費も、赤旗からの収入も減少するなかで候補者をすべての選挙区でなにがなんでも立てるというのは厳しいのではないでしょうか。

 どうせ当選しない候補者を無理に立てずとも、自民党であっても、民主党であっても、共闘することによって共産党の存在感をアピールすることも、恩を売ることもでき、党の退潮傾向に歯止めがかかるという計算が働いているのではないかと思いたくもなります。

 大阪のダブル選挙では、表面上はさすがに今回は自民党との共闘は掲げていないようですが、候補者を立てなかったことは、実質は「国民連合政府」構想ならぬ、「府市民連合地方政府」構想そのものです。しかし、大阪は、もしかすると、自民党と共産党で、「革新」も「保守」ももはや何の意味もなく、選挙戦のためのキャッチフレーズのひとつにすぎないことを見せてくれている政治先進地帯なのかもしれません。