西岡力(東京基督教大学教授)


「北朝鮮が今回ウラン核爆弾を実験し、爆発力がTNT換算で1万t以上出るならば韓半島の安保構造に地殻変動が起きるだろう。北朝鮮にはウラン鉱山が多数あり、これを濃縮して原子爆弾を製造し始めれば、数十、数百個を作ることができるようになる。今回の実験が、プルトニウム爆弾か、ウラン爆弾かが焦眉の関心事だ。

 北朝鮮政権は赤化統一のために核兵器を開発している。したがって核放棄は体制崩壊を意味する。韓国には北朝鮮の核開発を支援して保護する従北勢力がいるので、彼らを信じて核をあきらめない。金正恩の頭の中にはこのようなシナリオがあるのだろう。核ミサイルを実戦配置した後、北朝鮮軍が南へ侵略し、ソウルを包囲した後にその状態での休戦を提案する。受け入れなければ核兵器を使うと脅迫し、米国に対しては長距離ミサイルで威嚇して中立を守ることを要求する。この時に従北勢力が立ち上がって『どんな平和でも戦争よりはましだ』と主張して休戦案を受け入れようというだろう。もしソウルが包囲された状態で休戦すれば大韓民国は消滅する。このような希望を持っているので北朝鮮は絶対に核兵器をあきらめない」(趙甲済ドットコム2013年2月1日)。韓国の代表的保守論客の趙甲済氏は金正恩の核戦略についてこのように語っている。
北朝鮮による水爆実験実施の発表を受け、機体下部に調査のための集じん装置をつけたT4練習機が離陸した=6日午後、茨城県の航空自衛隊百里基地(川口良介撮影)
北朝鮮による水爆実験実施の発表を受け、機体下部に調査のための集じん装置をつけたT4練習機が離陸した=6日午後、茨城県の航空自衛隊百里基地(川口良介撮影)
 北朝鮮金正恩独裁政権がミサイル実験と3回目の核実験をそれぞれ2月11、12日に強行した。国内では穀倉地帯の黄海道でも餓死者が発生するほど住民の困窮が進んでいる。1994年金日成の死亡後、金正日政権は人口の約15%にあたる300万人を餓死させながら核ミサイル開発を続けてきた。金正恩政権になってもその路線に変化はなかった。金正恩は金正日死亡直後に「われわれに一切の変化を期待するな」と公言していた。まさにその通りの事態となった。

 趙甲済氏が指摘したポイントのうち爆発力は、韓国国防省によるとTNT火薬換算で6~7キロトンであり、同省は2006年の1回目の核実験は1キロトン、2009年の2回目は2から6キロトンと見ているので、10キロトンまでは到達しなかったが過去より威力は大きくなっている。過去2回はプルトニウム爆弾の実験だったが、今回は濃縮ウラン爆弾の実験の可能性が十分ある。ただし現段階では、米韓軍ともに、空気中に拡散した物質の分析を公表していないのでウラン爆弾だったかどうかは断定できない。ミサイルの搭載できる小型化が成功したのかどうか、一部で言われている二重水素、三重水素を使った強化爆弾の実験に成功したのかについても断定的なことは言えない。

 北朝鮮は実験当日の2月12日、朝鮮中央通信を通じて「以前とは違って爆発力が大きいながらも小型化、軽量化した原子爆弾を使って高い水準で安全かつ完ぺきに行われた…。原子爆弾の作用特性と爆発威力などすべての測定結果が設計値と完全に一致されたことにより多種化されたわが核抑止力の優れた性能が物理的に誇示された」と実験の成功を主張した。「多種化されたわが核抑止力」という表現を、ウラン型の実験を意味すると見る向きもある。もちろん彼らの主張は常にブラフである可能性があるから額面通りは受け取れない。