[世界潮流を読む 岡崎研究所論評集]


岡崎研究所

 米ニューヨーク・タイムズ紙のDavid E. Sangerワシントン支局長及びChoe Sang-Hunソウル特派員は、5月6日付ニューヨーク・タイムズ紙で、「北朝鮮、その新しい指導者についての情報は掴みどころがないままである」との論説を掲げ、北朝鮮に関する情報には限界があることを論じています。

 すなわち、オバマ・朴会談の準備にあたり、情報専門家は共通の敵、北朝鮮について不完全な理解しか持っていない。北朝鮮の指導部や兵器についての理解は悪化さえしている。

 CIAは当初、金正恩が父親、祖父の先軍政策よりも経済改革に関心があると判断したが、これは今や間違いだったとされている。

 第3回目の核実験から3カ月経つが、米国は北朝鮮がウラン爆弾を実験したのか否か、答えられない。北朝鮮が、米国が航空機で集めている北朝鮮周辺空域でのガスを封じ込めたからである。

 その後、新型移動式ミサイルが現れたが、偵察衛星から隠され、グアムに届く能力があるのかどころか、所在もわからない。
6日、ソウル市内でニュース速報を見る市民(共同)
6日、ソウル市内でニュース速報を見る市民(共同)
 国防情報局(DIA)は、北朝鮮はミサイルに核弾頭を付け得るまで小型化したと言ったが、オバマ大統領、国家情報長官はそれに疑問を呈している。

 北朝鮮の情報を収集するのは、常に難しい。北朝鮮はスパイ摘発に長けている。また、北朝鮮の科学者は外国旅行をせず、旅行の時も監視役がいて接触が困難である。携帯電話の利用が北朝鮮でも始まったことは情報収集にとり好都合であるが、効果は限られている。

 イランでは、ナタンズの濃縮施設へのサイバー攻撃が出来たが、これもコンピュター、インターネットがあまり使われていない北朝鮮では難しい。

 金正恩に関する情報も不確かだ。中国も金正恩とは金正日と違い、ほとんど会っていない。米国人で彼と会ったのはバスケットボールのスター、ロッドマンぐらいである。

 小野寺防衛大臣は、金正恩はいつ平和モードに戻ればいいのか判らないのではないか、と心配していると述べた。

 韓国高官は、金正恩が若さや未経験にかかわらず、軍を統制していることに驚いていた。ある計算によると、北朝鮮の上級将軍の3分の2が更迭されたという。しかし、金正恩が父親同様強いとの説には異論もある。正確なことは判らない。

 太平洋軍司令官ロックリアは、金正恩は、父親以上にせっかちで予測不可能と言うが、DIA長官のフラインは、金正恩はカリスマのある指導者で現実政治を理解しているとしている。

 核実験場は空気の証拠を出さないようにシールされている。早晩、北朝鮮はウラン爆弾を作れることを公表するだろう。しかし、何故金正恩がいまだにこれを秘密にしているかは、不明である。それは、技術が宣伝通り成功していないからかもしれない、と述べています。

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 サンガー記者は、ニューヨーク・タイムズの中では、情報機関に良く食い込んでいる記者です。イランのナタンズ攻撃に米国がどうかかわったか、暴露記事を書いたのもサンガー記者です。

 今回の記事は、北朝鮮についての情報が限られている事に焦点を当てていますが、情報関係者は何を知っているか、何を知らないかを明らかにすることはありません。したがって、この記事の内容も、常識的にこう思われるということを述べたものでしょう。

 第3回目の核実験がプルトニウム型かウラン型かを米国がまだ確定しえていないというのは、何らかの情報を得て書かれているようです。小型化が行われたか否か、また今後の北朝鮮による核兵器の開発スピードは、このことに依存します。

 金正恩がなぜウラン型かプルトニウム型かを隠そうとしているか、良くわかりません。金正恩は、北朝鮮の核の威力を宣伝したいと思われますので、ウラン型が上手く行かなかったからという推測は十分可能性があります。

 インテリジェンスの世界では、核実験がなされた場合、あるいはその疑いがある場合、空中の塵を集めて分析したりします。ウラン型かプルトニウム型かを知るのは重要ですが、それ以上に、核実験は行われたわけですから、それにどう対応するかがより重要です。結局、我々は不確実な中で行動して行かなければなりません。