富坂聰(ジャーナリスト、拓殖大学海外事情研究所教授)

 2015年が終わろうとする中国では、なぜか慌てて婚姻届を出そうとするカップルが急増した。その理由は、1月1日から正式に「一人っ子政策」が廃止され、それにともない生育計画にからむ「晩婚手当」も廃止されることが決まったからである。

 女性23歳、男性25歳が晩婚の条件だから都市では平均的な結婚年齢である。結婚を意識していたカップルが、「どうせ結婚するなら奨励金や長期休暇の制度があるうちに」と民生局に殺到したのである。

 それにしても子供を増やさせないために晩婚を奨励する制度を設けているなど中国の徹底ぶりがよく分かるが、ここにきて人口ピラミッドの歪みに起因する問題は、すでに人口爆発の問題を一旦横においても対処せざるをえないほど深刻化したということなのだろう。
 人口ピラミッドの歪みから生まれる問題といえば、最初に思い浮かぶのが高齢化であり、それにともなう社会保障の負担である。

 これが深刻な問題であることは言を俟たないが、高齢化や社会保障の財源不足問題は産児制限をしてこなかった国にも存在する。だが、中国にはこれらに加え「一人っ子政策」という世界でも例を見ない実験の結果生じてしまった問題も多い。

 その一つが男女比の歪みである。2012年の統計によれば中国の男女比は女性100に対して男性が117・7となっている。通常、自然の状態であれば女性を100とすれば男性が102~107の範囲であるとされることを考えれば、これがいかに異常なことか理解できるだろう。

 この状況を踏まえ中国では、2020年には3000万人~3500万人の男性が「結婚できなくなる」と専門家が警告しているほどなのだ。