藤井厳喜(国際政治学者)

 1月16日の台湾総統選挙ならびに立法委員選挙で民進党が圧勝した。民進党の蔡英文候補は約689万5000票、得票率で56.1%を獲得し、国民党の朱立倫候補の約381万3000票、得票率31.0%に大差をつけた。又、立法委員(国会:全113議席)の選挙においても、民進党が圧勝し、68議席(得票率で約60.2%)を獲得。国民党は35議席(得票率で約31.0)にとどまった。


 民進党の大勝利は日本にとっては朗報である。台湾国民は、中華人民共和国との併合を拒否し、独立を維持する意志を民主的選挙によって極めて明確に示した。これは、チャイナの脅威に直面する日本、アメリカ、並びに周辺諸国にとっては極めて歓迎すべき台湾国民の選択である。米中新冷戦は激化している。日本は、尖閣列島への侵略を初めとして、チャイナの脅威に直面している。安倍外交は対チャイナ包囲網を作り、これに対抗しようとしている。このような時に、台湾国民が独立と民主政治を守る意志を世界に堂々と示した事は、日本の国益にとって一歩前進であった。蔡英文候補の勝利により、日本は対チャイナ包囲網に台湾を加え、チャイナの脅威に対抗していくことが可能となった。

大敗し、分裂必死の国民党


 国民党は総統選挙で大敗を喫したばかりではない。立法院選挙でも、予想外の壊滅的敗北となった。台湾立法院は全113議席だが、この3分の1、つまり38議席を下回ると、重要法案に関する発言権を確保する事が難しくなる。そこで今回の立法院選挙では、国民党が38議席できるのか、それとも37議席以下になるのかは、国民党の将来を上回る重要な分水嶺と言われてきた。流石に底力がある国民党なので、40議席は確保できるのではないかという声が、選挙アナリストの間では有力であった。しかし結果は予想外の35議席の獲得に留まった。党内の責任追及は必至で、国民党の分裂は不可避であろう。言い換えれば、現在まで維持されてきた中華民国体制の中での「疑似的な二大政党制」が、いよいよ崩壊の時期を迎えているのである。

 中華人民共和国が台湾との併合を主張できるのは、あくまで国民党が作った中華民国体制が存続しているからである。この中華民国という国名が廃棄されて、台湾共和国と名称が変われば、中華人民共和国が「1つの中国」を建前に台湾を併合するという正当性は全く消滅してしまう。今後の政界再編の眼目は、中華民国のまま留まるのか、それとも、台湾国民が独立建国の方向を明確に選び、台湾共和国を創建するかどうか、の選択であろう。日本国民の大多数が台湾共和国の誕生を支持している事は言うまでもない。
民進党の選対本部前で開かれた集会で盛り上がる蔡英文主席の支持者=1月16日、台北(共同)
 現状では台湾世論の6割が中台関係の現状維持を望んでいると言われている。これはこれで1つの事実だが、それは台湾独立を望んでいても、それを公に口に出した途端に、中華民国体制と中華人民共和国の双方から、激烈な批判を受ける為である。内心はそう思っていても、それを恐れて、台湾独立を言い出せない国民が多いのであろう。しかし、近年の「ひまわり学生運動」などで明らかになったように、若年層では、明確な「台湾人意識」が益々強まっており、それは反チャイナの台湾ナショナリズムと表裏一体の関係にある。台湾人意識の高揚は当然の事ながら、台湾共和国の独立と建国を希求するのである。