上念司(経済評論家)

 経済的な発展は人々の結婚や子供を巡る考え方に大きな影響を与える。例えば、工業化に成功してより付加価値の高い製品を作る段階になると、それ以前のような単純労働者は不要となる。教育を受けていない者の就職機会は減少し、賃金もより高度な労働者に比べて安くなってしまうのだ。単純労働者全盛期においては、子供の数だけ生活が安定するが、次のステージにおいては、子供の数だけ教育投資がかかるようになってしまう。その結果、工業化が進めば進むほど少子化も進む。
 この点を証明するために、一人当たりのGDPと合計特殊出生率の関係を確認しておこう。
 
 グラフを見れば明らかなとおり、一人当たりのGDPが増えれば増えるほど合計特殊出生率は低下する。特に先進国ではアメリカを除いてほとんどの国が人口を維持するために必要と言われている2.1という値を切っている。フランスは非伝統的な結婚も国家が公認する過激な少子化対策を行って成功したと言われているが、合計特殊出生率はわずかに2を下回っている。
 全体的な傾向として、一人当たりのGDPが5000ドルを下回る国に比べて、それよりも豊かな国の方が少子化傾向は強いことが分かる。しかも、円で囲まれた先進国範囲の外側にあるハンガリー、支那、タイ、イランといった中進国にも少子化の波が襲い始めている。やはり、中進国であろうと過去に比べて工業化が進めば進むほど、少子化が進む傾向になるのはグラフから明らかであろう。
いくら支那共産党が政治的な力を持っていようと、全世界的な傾向の例外であり続けることは難しい。仮に、一人っ子政策がなかったとしても、工業化に伴う少子化は避けられなかったであろう。

 そのことは、ここ最近支那では晩婚化が進んでいることからも説明可能だ。晩婚化が進むと、当然のことながら少子化も進む。もちろん、晩婚化は一人っ子政策によってもたらされたものではない。前述の通り、より付加価値の高い労働をして効率よく賃金を稼ぐためにはどうしても教育への投資が必要だ。それは、教育期間の長期化も意味する。2001年から現在に至るまでの間に、支那の大学進学率は10%未満から30%弱まで上昇している。独り立ちしてお金を稼ぐ年齢が上がれば、当然結婚年齢も上がってしまうのだ。