[World Energy Watch]

山本隆三 (常葉大学経営学部教授)

 大学の教員をしていると、企業に関する様々な話、噂を従業員、就職サービス提供企業関係者などから聞くことがある。総選挙前にブラック企業として週刊誌に取り上げられた「ワタミ」についての話が聞こえてくることもあった。そのワタミが再生可能エネルギーに進出している。昨年の秋田での風力発電事業に続き最近では北海道のメガソーラー(大規模太陽光発電)に参画した。

 企業として環境問題を考え再生可能エネルギーに取り組むのは悪いことではない。しかし、再生可能エネルギーと何の関係もない居酒屋を中核事業とする企業が風力発電、太陽光発電に乗り出すのは何故だろうか。イメージをよくするためだろうか。ただ、必ずしもそうは見ていない人もいる。「ブラックソーラー」と揶揄する人もいるようだ。

居酒屋チェーン「和民」の看板(宮川浩和撮影)
居酒屋チェーン「和民」
の看板(宮川浩和撮影)
 「ワタミ」のホームページでは、地球温暖化問題に取り組むために二酸化炭素を08年比20年度50%削減(売上当たり)することを目標としており、そのためにメガソーラーに進出したとある。対象が年と年度で合ってないのはご愛嬌としても、太陽光発電事業を行えば、自社の二酸化炭素排出量が減少する計算でいいのだろうか。ワタミが使う電気を北海道に設置する太陽光発電で賄うわけではないので、素直には受け取れない説明だ。まず経営学の観点からワタミの再生可能エネルギー事業を考えてみよう。

「シナジー」を考える企業の多角化理論


 かつて多くの先進国で多角化ブームがあった。要は、異業種への参入だが、ブームになったビジネス、あるいはその時点で儲かりそうな事業に手を出すということだ。日本でも、バブル期には多くの企業が本業とは関係のない新規事業に手を出した。例えば、一時通信販売事業も多くの企業でブームになった。カタログを印刷して配れば良いだけの簡単な事業に思えたのだろう。実際にはどの事業にも儲けのノウハウがあり、門外漢が真似をしても簡単にはうまくいかない。

 本業の調子が悪くなってくると、少し調子がよさそうな事業に手を出すのは分からなくはない。しかし、経営学のテキストでは「シナジー」がない分野への多角化は避けるべきと教えている。シナジーを日本語で説明すると「相乗効果」になるが、実際には相乗効果を生む共通点を指すと考えたほうが近いだろう。企業には様々なシナジーがある。

 例えば、製造・技術のシナジー。自動車会社がフォークリフトも製造しているのはその分かり易い例だ。販売・営業のシナジーもある。高級宝飾品を扱っている企業が高級時計も扱うのは販売のシナジーだろう。操業のシナジーもある。多くの鉄道会社がバス事業も行っているのはその例だ。自社の事業と保有するノウハウを考え、その上でシナジーがある分野に進出することが重要と経営学では教えている。闇雲な多角化は失敗するケースの方が圧倒的に多い。その反省から一時は「選択」と「集中」という言葉が事業を推進する際によく使われた。