[World Energy Watch]


山本隆三 (常葉大学経営学部教授)

 電気事業法の改正が決まった。2016年の春をめどに、今は地域の電力会社だけが供給している家庭、あるいは小規模な工場、商店向けに新電力と呼ばれる新規事業者も電気を供給することができるようになる。改正の目的は、需要家の選択肢を増やすことと料金の引き下げを図ることだ。

 ワールドカップのためか、あまり注目されなかったが、ヤフーが6月10日から20日までネットで行ったアンケート結果を見ると、電力供給面で競争が起こることにより料金が下がると期待する人が多いようだ。「電力自由化 電力会社を変えますか? 」との質問に答えた約9万5500人のうち、68.5%が変えたい、11.6%が変えたくない、19.9%がわからない/どちらでもないとの結果だった。変えたいとしている人の大多数は変えることにより、料金が下がるメリットがあると期待してのことだろう。

 ガス会社などのエネルギー企業はむろんのこと、ソフトバンクなども電力事業に参入する意向を示している。新規事業者が参入し競争が激化すれば料金は下がると考えられるが、電気は普通の商品とは違い、コストが事業者により異なるために、競争があっても料金が下がるとは限らない。90年から自由化を進めた英国では、停電の可能性、料金上昇という問題が出てきており、日本でも自由化により料金が下がるかどうか不透明なところもある。多くの人が期待するように電気料金は下がるのだろうか。

電力会社を選べるのは、今は企業などだけ


 一般家庭への供給は、住んでいる場所により北海道電力から沖縄電力までの地域の電力会社10社により行われている。電力会社を選ぶことができない家庭などと異なり電力消費量が多い工場、商業施設などの需要家は電力供給を行う電力会社を選択することができる。地域電力会社に加え新電力と呼ばれる電気事業者からも電気を購入することが可能だ。新電力は、特定の規模がある需要にのみ応えるので特定規模電気事業者が正式な名称だ。

 地域電力会社からではなく新電力からも電気を買える自由化と呼ばれる制度は、2000年3月に特別高圧と呼ばれる2万kW以上の契約量を持つ大規模工場、商業施設等の需要家向けに導入された。全需要量に占める比率は26%程度だ。その後、04年に500kW以上の需要家、05年に小規模工場等を対象とした高圧と呼ばれる契約量50kW以上の需要家にまで自由化の範囲は拡大された。電気の需要量で言えば約60%は自由化されている。電力会社を選べない需要家は、需要量の5%程度を占める小規模商店などと35%を占める家庭だけになっている。

家庭用供給には新規参入者が続々


 2年後に家庭用も自由化される見通しとなったことから、新規事業者が続々と名乗りを上げている。経産省の特定規模電気事業者のリストには6月30日現在で270社の新電力が登録されている。7月1日から既に自由化されている高圧の需要家向けに電力供給を開始することを発表したソフトバンク系列のSBパワーの名前もある。

 登録企業のなかには、日産自動車、三井物産、大和ハウスなどの大企業の名前もあるが、本社の住所の記載があるだけで、電話番号もホームページの記載もない企業も目立つ。ざっと見たところ、半分以上の企業は住所の記載しかなく、とりあえず登録を行っているだけのようだ。

 ワタミエコロジーのように再生可能エネルギーによる電気の販売を示唆する名前を付けている企業も多くある。また、楽天エナジーは、省エネ設備の導入などによりエネルギーコストを下げる一方、宿泊設備には無料の広告などを行うとし、楽天の他のサービスとの組み合わせの提案を行っている。家庭用が自由化されれば、ソフトバンク、ワタミなども既存のサービスと組み合わせ新規の顧客獲得に乗り出すことになるのだろう。

 需要家にとって選択肢が増えるのは良いことだ。例えば、再生可能エネルギーで作られた電気を使いたいという需要家は満足感を得られることになる。しかし、大部分の需要家にとっては、やはり価格が供給会社選択のカギだろう。電気料金は下がるのだろうか。NTTに独占されていた電話の料金が自由化により下がったことから、電気料金も自由化により下がるとの解説もある。本当だろうか。