(THE PAGEより転載)
 ソフトバンクが電力の小売事業に参入する意向を固めました。電力の小売りが自由化される2016年をメドに、家庭向けに電力の販売を行う予定です。電力の自由化は利用者にとってどんなメリットがあるのでしょうか?

発送電分離のイメージ図
 現在の制度では、電力は地域ごとに設立された電力会社が独占的に供給することになっています。しかも電力料金は、電力会社がコストを積み上げる総括原価方式によって算定することになっています。電力会社間には競争がありませんから、事実上、電力会社の言い値で電気料金が決まっていたわけです。

 2013年11月に成立した電力システム改革法(改正電気事業法)では、電力事業への参入や電気料金設定について自由化することが盛り込まれました。2016年から電力小売業への参入が原則自由となるのですが、ここにソフトバンクが名乗りを上げたわけです。2020年からは、発送電の法的分離や料金の全面自由化が行われる予定です。

 電力を自由化すれば、利用者は好みの電力会社から自分にあったプランを選択できるようになります。また競争が活発化するので、状況によっては、より安く電力を購入することができるようになるかもしれません。例えばソフトバンクであれば、携帯電話やインターネット回線とセットで電力を割引購入するといったようなやり方が考えられます。大量の電力を安く使いたい人、自然エネルギーの電気だけを使いたい人など、参入事業者が増えてくれば、多様化するニーズにきめ細かく対応することも可能となります。
 しかし電力を自由化すればあらゆる問題が一気に解決すると考えるのは早計です。電気料金が自由化されるということは、電気料金が大幅に値上がりすることもあり得るということを意味しています。日本は原発が停止した影響でエネルギーの輸入が増えているというイメージがありますが、実際はそうではありません。エネルギーの輸入金額が増大したのは、ほとんどがエネルギーの市場価格上昇が原因であり、輸入量はそれほど増えていないのです。将来、さらにエネルギー価格が上昇するような事態になれば、当然、電力会社は利益を確保するために容赦なく値上げを実施するでしょう。

また自分が利用していた電力会社の経営が苦しくなり、電力事業を維持できなくなるという事態もあり得るわけです。さらにいえば、十分な数の事業者を確保できないまま無理に自由化を実施すると、トラブルが発生することも考えられます。米国では電力の自由化が以前から進められてきましたが、2000年にはカリフォルニア州で大規模な停電事故が発生しています。

 しかしながら、地域独占にあぐらをかいていた電力業界に風穴が開くこと自体はよいことです。ソフトバンクのような事業者が多数参加し、十分な供給能力が確保されることが望まれます。また利用者も、自由化すれば無条件に料金が下がると考えるのではなく、選択肢が増えるということが自由化の本質的なメリットであることをよく理解しておく必要があるでしょう。

(大和田 崇/The Capital Tribune Japan編集長)