青山繁晴(独立総合研究所社長、作家)

 わたしは日韓合意の直前、これに明確に反対であることを安倍総理にお伝えした。何らの権限もない一民間人であるが、それだからこそ昨年末に、この内容で合意すべきでない、すれば安倍内閣はその使命を遂行できなくなるとお話しした。

 岸田外相は少なくとも日韓交渉においては、空っぽとしか言いようがないほど外務官僚に対しても総理に対しても、ただのイエスマンだった。

 交渉を操った外務官僚および外務省出身の谷内正太郎国家安全保障局長らには、そもそも決定権はない。すなわち最後は、安倍総理ただ一人の決断に、現在の子供たち、将来の子供たちに重大な影響を与える合意をやるかどうかは掛かっていた。

 子供たちとは、日本のことだけだろうか?

 わたしは長年、韓国軍の将軍や士官、あるいは韓国の外交官、たとえば原子力発電所の幹部、すなわち議論相手と、そして街で触れあう庶民のみなさんに発してきた問いがある。

「慰安婦をめぐって韓国の政府や反日団体が主張していることは、まずは韓国のたいせつな名誉、そして韓国の子供たちと未来の世代を傷つけませんか?」
記者会見を終え、ソウル市内で抗議行動する元慰安婦支援団体などのメンバー=1月14日(共同)
 幼い頃から、真っ赤な嘘を刷り込まれてきたみなさんは多くが怒って、強く否定なさる。

 しかし、ちょっと待ってください。わたしは日本の主張をぶつけようとしているのじゃない。

 実際、日本の政府はもちろん、マスメディアにも出てこない。

 こう静かに話すと、何割かの韓国人は「あれ」という表情になり、いくらかは「聞こう」という姿勢になってくれる。

 「日本軍が朝鮮半島の女性を無理に連れて行って性奴隷にしたというのなら、韓国の男性はそれを黙って見ていたのですか? 妹さんやお姉さん、あるいは奥さんが銃剣で脅されて拉致されるときに、韓国の男性はその銃剣が怖くて、自分を守って、妹に姉、妻を見殺しにしたのですか」

 「ぼくが実際にこの韓国で会う男性は、みんな情愛が濃くて、家族への愛情が深い。わずか七十年、八十年の間に韓国男性は大変身をして今はそうだけど、戦前はみな、そんなに卑怯で薄情だったのですか」