[報道にはすべて裏がある]

織田重明 (ジャーナリスト)


 12月12日、自民・公明の両党は再来年4月からの消費税率10%増税時に外食以外の食品全般に8%の軽減税率を適用することで合意した。必要となる1兆円もの財源の確保はメドが立っていないにも関わらず、公明党の主張を自民党が丸のみしたかたちだ。
普天間基地を抱える宜野湾市(Getty Images)
普天間基地を抱える宜野湾市(Getty Images)
 当初、自民党内でも財務省に与する税制調査会を中心に公明党案に対する反対は強かったはず。それを強引に押し切ったのは、来年7月の参議院選挙で公明党との協力を重視する総理官邸の意向だとされる。だが、永田町で囁かれるのは、年明け早々に行われる別の選挙こそ官邸が公明党案の丸のみを官邸に決めさせたという話だ。それが人口9万6000人あまりの沖縄県宜野湾市の市長選挙だ。

 来年1月24日が投開票の宜野湾市長選挙の最大の争点は、市内にある普天間基地の問題だ。普天間基地は、面積4.8キロ平方メートル、市面積の25%におよぶ。ちょうど滋賀県における琵琶湖のように、基地は市の中心部に位置し、反対側に行こうと思えば、ぐるりと基地の外周をまわらなければならない。

 しかも、宜野湾市は、那覇市を中心とする都市圏の一部を構成しており、人口密集地。04年に普天間基地に隣接する大学にヘリが墜落する事故が起きるなど、住宅密集地に囲まれた基地の危険性が指摘されてきた。日本政府は米国との合意に基づき基地を沖縄本島北部の名護市辺野古に移設する工事を進めているが、それに真っ向から反対し、普天間基地の県外移設を求めているのが、昨年11月に自民党が推す現職を破り当選した翁長雄志沖縄県知事だ。自民党は、昨年12月の衆議院選挙でも沖縄県内に4つある小選挙区で全敗。この他にも辺野古がある名護市長選挙も昨年落としており、沖縄では負けが込んでいる。メディアの論調も知事らの反対を押し切って進められる辺野古での工事に批判的で、官邸にとって最も頭が痛い難問のひとつとなっている。

 そうした状況のなか来月行われる市長選挙。自民党が推すのは、現職の佐喜眞淳氏(51)。自民党県議を経て、前回にあたる12年の市長選挙で初当選した。一方、対立候補となるのは、県土木建築部の元幹部職員で新人の志村恵一郎氏(63)だ。志村氏の支持母体となるのは、昨年の知事選で翁長氏の当選を実現させた「オール沖縄」。社民党や共産党などの革新各党に加え、一部保守系も取り込んだ、沖縄独自の枠組みだ。12月9日の志村氏の総決起大会には、翁長知事も応援にかけつけた。

 この選挙に官邸は異常に肩入れしている。まず、今月4日に突如、官邸で行われた日米の共同記者発表。米国のケネディ大使とともに菅義偉官房長官が、沖縄県内の米軍施設・区域の返還の一部前倒しを明らかにしたのだ。そのなかには、普天間飛行場の一部約4ヘクタールが含まれていた。政府と近い佐喜眞市長がかねてから求めていた普天間基地の早期返還に、一部とは言え応えることで、実績づくりに協力し、市長選挙を後押ししようという官邸の意図がみえみえだ。

 翌日の朝刊で、沖縄の地元紙は、「今回返還される普天間飛行場の4ヘクタールは飛行場全体の0.8%に過ぎない」(沖縄タイムス)と指摘し、日米両政府の発表を「話クワッチー(話のごちそう)」に過ぎないとの翁長知事の受け止めを引用。会見にわざわざ在日米軍司令官のドーラン空軍中将を同席させたのも「何とも仰々しいお膳立てだ。成果をアピールしたい気持ちがありあり」と批判した。