仲新城誠(八重山日報編集長)



 沖縄では2016年、宜野湾市長選を皮切りに、県議選、参院選と、米軍普天間飛行場(同市)の辺野古移設を最大争点とする選挙が続く。文字通り「選挙イヤー」である。一地方自治体の選挙でありながら、日本の安全保障そのものが問われるという特異な状況だ。

 宜野湾市長選には自民、公明が推薦する現職の佐喜真淳氏と「オール沖縄」と呼ばれる翁長雄志知事を中心とした勢力に支えられる新人の志村恵一郎氏が激戦を展開した。

 選挙期間とその前後を通じ、沖縄メディアの報道を見ていると、県紙「沖縄タイムス」「琉球新報」は常に辺野古移設反対一色。当然、同じ政策を訴える「新人寄り」の紙面という印象を強く受けた。
「辺野古新基地を造らせないオール沖縄会議」の結成大会で手をつなぐ参加者=2015年12月14日夜、沖縄県宜野湾市
「辺野古新基地を造らせないオール沖縄会議」の結成大会で手をつなぐ参加者=2015年12月14日夜、沖縄県宜野湾市
 具体的には、新人の事実上の支援組織である「オール沖縄会議」という組織の設立を両紙が1面トップで好意的に扱ったり、現職の政策を批判する読者の投稿が連日のように掲載されたり…。細かい点を挙げれば切りがないが、現職陣営は「新聞とはこんなもの」とサバサバしていた。もう沖縄メディアの印象操作や情報操作には驚かなくなっているのである。「中立公平な紙面」とはもともと理想論に過ぎないのかも知れないが、多くの県民が、選挙報道のあり方に問題意識すら持てない現状だ。

 翁長知事は新人と二人三脚の選挙戦だった。新人陣営が出した新聞の全面広告では、候補者ではなく、翁長知事の写真が大々的に使われた。翁長知事が現在の沖縄で絶大な威光を誇るのは、彼が何よりも選挙の「常勝将軍」だからだ。逆に今年の一連の選挙のうち一つでも落とせば、翁長知事の政治力は目に見えて大打撃を受けるだろうと感じた。

 私が住む八重山諸島の石垣市は沖縄本島から約400㌔離れているが、宜野湾市長選の結果は他人事ではない。「オール沖縄」と称する勢力が、石垣市の行政区域である尖閣諸島の問題をはじめ、沖縄の安全保障上の危機に対し、何一つ有効な処方箋を提示していないからだ。

 普天間飛行場の辺野古移設を推進する安倍政権は「基地負担の軽減」と「(中国に対する)抑止力の維持」の両立を訴えている。これに対し、辺野古移設阻止を掲げる「オール沖縄」は、普天間飛行場の米海兵隊が「そもそも抑止力ではない」とか「尖閣問題は平和外交で解決すべき」などと主張するばかりで、国境に住む住民と危機感を共有している感覚がまるでない。