ケント・ギルバート(米加州弁護士・タレント)

米中の軍事衝突はない


 アメリカのイージス艦「ラッセン」が、南沙諸島を航行しました。これは「航行の自由(Freedom of Naviga-tion)」作戦と呼ばれ、アメリカはこのような作戦を数週間から数カ月続けるそうです。

 対して中国外務省は「中国の主権と安全保障上の利益を脅かす」として、抗議声明を出し、米艦監視のために中国艦を追尾させました。

 しかし、非があるのは明らかに中国であり、アメリカの行為は極めて真っ当です。南シナ海を中国に領有させる理由は全くありません。この海域を中国が支配しても、中国を利するだけで、国際的にはマイナスでしかない。

 それに米艦が航行しても、国際法上問題がありません。国連海洋法によれば、島は「自然に形成された陸地であって、水に囲まれ、満潮時においても水面上にあるもの」(百二十一条)で、島であれば領海などの主張が認められます。ところが、暗礁となると、岩が海中に完全に隠れてしまい、同条文は適用されません。

 また、同法には「人工島、施設及び構築物は、島の地位を有しない」(第六十条)とありますから、中国が暗礁に人工島を作っても、その周囲に領海など存在しないのです。ですから、アメリカの船が公海であるこの付近を航行しても、何ら問題はない。

米海軍横須賀基地を出港するイージス駆逐艦ラッセン%u30022015年10月に、南シナ海で中国が「領海」と主張する人工島周辺の12カイリ(約22キロ)内を航行した=1月6日午前、神奈川県横須賀市(米海軍提供)
 今回の事態について、日本のメディアは「米中間の緊張が高まっている」とし、あたかも戦争前夜かのような報道をしています。軍事のことがまるでわかっていない。現実的に考えて、両国の武力衝突が起こるわけがありません。

 アメリカが艦を派遣したのは、あくまでも現状の把握です。偵察衛星で人工島の状況はわかっていますが、それだけでは捉えられない内容もあります。それを調べるためでしょう。加えて、実際に〝押して〟みたら、どう反応してくるかを確かめる意図もあったのでしょう。いずれにせよ、今は様子見、下調べの段階です。

 アメリカが派遣したイージス艦には、高度な情報収集能力や索敵能力が備わっています。ですから、もし中国が不穏な動きを見せれば、何もかもがアメリカに筒抜けになります。通信の内容が分析され、どういう設備が付近にあり、それがどの程度の性能かといったことが、アメリカにすべて知られるのです。まさに、真珠湾攻撃の前に、アメリカが日本の動きを完全にキャッチしていたのと同じです。

 となると、中国はバレるのを覚悟で行動に出るか、黙っているしかない。もし行動に出たら、「張子の虎」の中国軍の完敗は確実です。中国軍もバカではないでしょうから、仕掛けませんよ。せいぜい抗議して、中国艦に追尾させるだけで終わるでしょう。

 アメリカはそれをわかった上で、イージス艦を選んだと思います。本当にアメリカはこういう悪知恵がよく働きます。

異常な九条崇拝


 日本国民が軍事オンチなのは、憲法や戦後教育の影響が否めません。ご承知の通り、戦後、GHQは現行憲法がどのような過程で制定されたのか論じることを禁じました。それに加えて、ウォー・ギルト・インフォメーション・プログラムによって、現行憲法がいいものだという洗脳が日本人に施されました。

 近年になって、改憲の議論が盛り上がっていますが、実を言うと、日本国憲法の大部分は普通です。世界各国の憲法にも似たような条文がありますし、いくつかの条文間の矛盾に目をつぶれば、致命的な不備はそれほどありません。

 しかし、二つだけ、世界のどこへ行っても見当たらない異常な箇所があります。

 一つ目は第九条です。この条文が入ったのは、アメリカの誤解によります。

 当時のアメリカには、「日本人は赤ん坊から年寄りまで、軍国主義に染まっていて取り返しがつかない」「みんなが残虐で、精神が完全に狂っている」という思い込みがありました。日本人全員を殺さないといけないと本気で考えていたアメリカの議員もいたほどです。

 なぜそう思ったか。日本が強かったからです。本当に恐ろしかったのです。ですから、本土決戦になれば、アメリカ軍に百万人もの犠牲者が出るとアメリカは試算していたと言います。だから、日本から戦争ができる能力を徹底的に奪う必要があると思ったのです。

 ところが、GHQが来日してみると、日本人は従順で優しく、素直な民族でした。冷戦の激化で、九条を入れたのは大失敗だったと気付くのですが、今さら取り下げられない。それで、ずるずると引きずったまま現在に至るわけです。

 九条は憲法内に矛盾を生じさせています。九条二項には「陸海空軍その他の戦力は、これを保持しない」とあり、日本は軍隊を持っていないことになっています。

 自衛隊はどう考えても軍隊ですが、軍隊ではないとしておきましょう。軍隊がなければ、文民と軍人の区別は不要なはずですし、自衛隊員は文民のはずです。それなのに、なぜ「内閣総理大臣その他の国務大臣は、文民でなければならない」(第六十六条第二項)と書かれているのでしょうか。結局、〝切り貼り〟で作られたから、こうした矛盾があるのです。

〝憲法九条信者〟は、九条が世界でも類を見ない理想的な思想を表わすと信じ、崇拝しています。ところが実情は、単なるアメリカによる「罰」なのです。

 また、〝信者〟のみなさんは平和憲法と言いますね。あの憲法があったから、七十年間平和だったと思っています。ですが、日本が平和でいられたのは、アメリカに軍事的に依存していたからです。憲法のおかげではない。

 そもそも、戦後の日本は本当に平和だったのでしょうか。竹島が奪われ、北方領土は戻らず、拉致被害者も取り返せず、沖縄は危うい。日本人はこの現実を直視すべきです。

今こそ変革のとき


 もう一つおかしいのは、天皇が元首ではないという点です。元首が定められていないのは、世界中の憲法と比べて異常なことです。

 天皇の扱いについては、終戦後、天皇の戦争責任を問う声が大きく、簡単に事は進まなかったようです。「東京裁判をする以上は、天皇も被告として出廷させるべき」、「天皇が存在したままでは、日本は軍国主義から脱しない」という意見もありました。

 しかし、知日派から「天皇がいなければ、日本はまとまらない」という助言があり、最終的には天皇を象徴として残すことで決着したのです。

 この判断は正解でした。天皇という日本人の精神を取りまとめる強い〝指導者〟がいたおかげで、GHQは終戦後に、あれだけ大幅な改革を断行できました。これは世界の歴史を見ても、日本が唯一の成功例でしょう。象徴としてでも天皇を残したことは、GHQの功績と言っていいでしょう。

 改革の実務はマッカーサーが担当しました。彼については賛否両論ありますが、少なくとも指導力はありました。例えば、民主化の名目で共産党を残しましたが、併せて反共政策も実行しています。これは日本がソ連の影響下に入り、共産化することを阻止するためです。ソ連も連合国の一つでしたから、その恐れは十分にあったのです。

 農地改革は、反共政策の一環です。一九四七年から、GHQの指示の下で日本政府が安値で強制的に土地を買い上げ、小作人に分け与えました。この政策で自作農が増えたため、共産主義者は「地主が小作人を搾取している」と訴えられなくなりました。

 また、ソ連兵を含む進駐軍が、赴任地から二十五マイル以上離れることを禁止した。共産主義者は全国各地を飛び回って革命運動の拠点を作りますが、それが不可能になりました。

 大戦から七十年経って、日本国民の目は憲法に向きつつあります。しかし、それでも改憲の議論が進まないのは、多くの日本人はこのままでいいと思っているからです。

 先日、私が読売テレビの『そこまで言って委員会NP』に出演したとき、「日本はこのままでいい」と言った出演者がいました。桂ざこばさんと八田亜矢子さんの二人です。何も不都合を感じていないと言っていました。日本人はもともと変化をあまり好みません。安定を求めます。現状に著しい不都合が生じたときのみ、変化を求めます。

 でも実は今、安全保障問題を筆頭に、「著しい不都合」が生じています。日本人が気付いていないだけです。戦後、憲法に関する議論を禁じられ、日教組の洗脳によって自虐史観を植えつけられ、報道も偏向している。そのツケが今になって回ってきているのです。

デモ隊こそ民主主義を否定


 平和安全法制の議論では、マスコミも反対の論調が目立ち、反対デモが日本各地で行なわれました。デモ隊は決まって「民主主義を取り戻せ!」と声高に叫びます。でも、少し考えてみて下さい。世界のどこにデモ隊の意見を聞く民主主義国家があるのでしょうか。

 民主主義とは何かと言えば、日本の場合、国民の代表である議員を選挙で選んで、国政を任せるということです。これが日本の民主主義です。デモ隊はそれを否定しています。

 自分の意見を政治に反映させたいのなら、選挙権を行使するのが第一です。テレビ朝日の『朝まで生テレビ』に出演したときも、「投票に行きなさい。それが自分の声を聞いてもらう一番の方法だよ」と繰り返し言いました。自ら選挙権を放棄するのも結構ですが、それは発言権を放棄したことと同義です。民主主義の主柱は、デモはなく選挙です。

 国会での議論で、安倍総理は非常に上手な答弁をしていました。総理は「明白な危険が『ない』と確認できない場合に、行使に踏み切る可能性」を示唆し、野党に危険が「ない」ことの証明を迫った。これは「悪魔の証明」とも呼ばれ、証明するのが非常に難しい。

 そして、野党はしきりに「何が脅威か」を総理に言わせようとしていましたが、総理は決して明確には答えなかった。「中国か」「海峡のためか」と問われても、総理は、衆議院での審議の間は、決して明言しませんでした。
安保関連法案に反対する大規模集会で、手を取り合い野党共闘をアピールする党首。(左から)生活の党の小沢共同代表、民主党の岡田代表、共産党の志位委員長ら=2015年8月30日午後、国会前
 もちろん、野党は脅威があることを承知で総理に質問しています。ですが、総理は「違う」と言う。であれば、現状に著しい不都合もなく、変化を求める必要はありません。野党はこういう論理構成で主張すればよかったのですが、しなかった。

 何より野党の一番の失敗は、対案を出さなかったことです。維新の党が辛うじて提出しましたが、党内分裂のせいか遅すぎた。民主党の中には、安保法制に賛成の議員もいたはずです。しかし、党議拘束があって結局は全員が反対に回りました。

 アメリカの場合、所属する党の主張がどうであれ、議会内での投票は各議員の判断に委ねられます。造反という概念が無いのです。一応、議長や院内総務は全会一致を目指して取りまとめますが、強制力はありません。二大政党には罰則も党議拘束もありません。各議員が選挙を意識して、あくまでも選挙民の意向に沿った行動を取るのです。

 共産党は「徴兵制になる」と騒いでいましたが、なるわけがありません。今の時代、一般人を自衛隊に雇っても役に立ちません。「戦争になる」という煽りも全く根拠がない。

 最近、共産党に票を投じる人が増えていると聞きます。人気が出てきたのではなく、仕方なく共産党に入れているようです。知り合いにも共産党に投票した人がいました。驚いて「共産主義者になったのか」と聞いたところ、「他に入れるところがなかった」と言いました。「共産党の歴史や綱領を知っているのか?」と言いたい。以前、瀬戸内寂聴さんが「共産党はブレない」と発言しましたが、確かに日本を壊そうとする意志が決してブレない。

まともに反論しない反対派


 集団的自衛権については、私はフェイスブックでも意見を書いており、読者と議論をしています。コメントを見ていると、どうしても納得しない人がいます。納得しないのですが、反論もしない。挙句の果てに、誹謗中傷や、私がモルモン教徒だからとか、神様の意志がどうのとか、関係のない話に持って行こうとする。まともな反論は、ほぼ皆無です。「あちら側」には、論点をずらすテクニックを持った人はたくさんいても、真正面から堂々と議論する知識や気概を持った人は滅多にいないようです。

 大げさに言えば、私は日本人の〝覚醒〟のために投稿しています。現実を無視して目を閉じたままの人が、論点ずらしで他の人を誘導するのでは、投稿が無意味になります。

 ですから、無関係な書き込みをする人には、まず注意します。それでも改めない人のコメントは削除します。最悪の場合、相手をブロックすることにしています。

 どうも日本人は自己主張や議論が下手で困ります。それは穏やかな性格や争いの少なさの表れでもあるでしょう。ただ、その代償として、日本人はストレスを溜めこみます。

 日本のテレビドラマを見ると、それがよくわかります。日本のドラマでは、主人公が言いたいことを言えずにストレスを抱え、最終回でようやく自分の思いをぶつける、という展開が多い。そうやって一クール(十二週)持たせるわけですね。アメリカ人の私からすれば、「言いたいことがあるなら、さっさと言えよ!」と思わずにはいられません。

 アメリカ人は強く自己主張をします。日本人には、意見を戦わせることでストレスが溜まるように見えるようですが、問題が解決するので議論の後はお互いスッキリします。

反日の源泉


 これまで朴槿惠大統領は日本の呼びかけにも頑なに応じませんでしたが、十一月二日、三年半ぶりに日韓首脳会談が開かれました。十月中旬の米韓首脳会談の際に日本との関係修復をアメリカから求められ、安倍総理をソウルに招いた。アメリカの知識層も「告げ口外交」にはウンザリしています。「〝夫婦喧嘩〟に巻き込むな。面倒だから当事者で話し合え」というのが、オバマ大統領の本音だと思います。

 会談にあたっては、相変わらず韓国は慰安婦への謝罪を条件に出してきましたが、日本政府は拒否しました。当然です。韓国には「七十年談話を読みなさい」と言ってやればいい。安倍談話は、これまで謝罪してきたのだから、これ以上謝らないと言っています。その意味では、韓国の主張を無視した談話です。

 韓国が慰安婦問題について騒ぎ続けるのは、一体何のためか。実は中国のためなのです。日米の信頼関係が弱くなり、最終的に日米安保体制が崩壊すれば、米軍は日本から引き揚げる。そうなると、日本は中国の傘下に入るはず……このシナリオが実現したときのために、韓国は中国に協調して反日路線をとり、慰安婦問題をしつこく追及するのです。

 そもそも韓国は反日の源泉とも言うべき、ある心情を抱いています。それは嫉妬心です。かつて、日本へは中国から朝鮮半島経由で文明がもたらされました。もちろん、日本はそのまま使ったわけではなく、日本流にアレンジしたわけですが、韓国は日本の兄だという優越感を勝手に持っている。

 ところが、弟であるはずの日本のほうが韓国よりも豊かな国になってしまった。だから、悔しいのと同時に、日本が羨ましくて仕方ないのです。

 それでも、一般の韓国人は反日教育を受けていても、実は根っから日本嫌いだという人は少ない。なぜかと言うと、日本は憧れの存在だからです。

 しかしこれが政府レベルになると、看過できない反日に変貌します。とにかく相手を貶めることだけが目的で、見苦しい〝告げ口〟や〝嫌がらせ〟をしています。

 韓国政府が反日を煽る背景には、国を一つにまとめるものが、それしかないという事情があります。幸いなことに日本には天皇という精神的支柱があります。しかし、民主主義体制になって間もない韓国には、国民の心の支えがない。韓国には儒教が根付いていますが、階級社会を肯定する権力と統治の教えは、民主化の役に立ちません。

 韓国は国内情勢が行き詰っているのも、全て日本のせいにしています。財閥がいまだに経済の大部分を支配し、貿易は中国に過度に依存しています。自分らが改革を怠ってきたせいなのに、なぜか日本が悪いと言う。

韓国は〝ストーカー〟


 歴史を繙いてみると、韓国は日本に助けられてばかりです。上下水道、道路、鉄道、教育、社会制度……日本はどれだけ朝鮮半島に投資し、その発展に貢献したことか。ですが、韓国には感謝の気持ちが全くありません。感謝の気持ちを忘れた国が栄えるはずがない。これは人間社会の摂理です。

 台湾の馬英九総統は本土寄りですが、その彼でさえ、日本が主導した嘉南大圳や烏山頭ダムなどの水利事業によって台湾に恩恵がもたらされたと認めました。そして、「日本統治時代には悪いこともあったが、良いことを記憶しておくことも重要だ」と述べたのです。本来なら、韓国も同じように日本を評価してもいいはずです。

 日韓併合時代、アジア唯一の先進国だった日本の国籍を得た朝鮮人は、喜びました。「将来有望なイケメン実業家と結婚できた」と思ったのです。ところが日本は事業に失敗(敗戦)して無一文になる。強制的に離婚させられた後、「ろくでもない男と無理やり結婚させられた上にDV(ドメスティック・バイオレンス)を受けていた」と噓を言い始める。ところが日本は驚異的な戦後復興で、すぐ先進国に舞い戻った。嫉妬に狂った元妻は「あんただけ幸せになるのはズルい」と、離婚慰謝料を求めます。一九六五年の「日韓基本条約」で全て支払いました。でも、元妻は経済が傾いたらお金をせびればいいと思うようになった。もはや〝ストーカー〟状態です。

 こういう国に正面から対応してはいけません。どんな要求も無視して応じなければいいのです。毅然としていればいい。

 誠実、規律正しい、おもてなしの心がある、時間を守る……日本人にはいい面がたくさんあります。しかし、このような心構えで外交に臨んだら負けが見えている。日本人の良い面が裏目に出ているのです。このことは、アパ日本再興財団が主催している「第八回『真の近現代史』懸賞論文」の応募論文でも指摘したところです(最優秀藤誠志賞受賞)。

 ですから、韓国との付き合い方も含め、日本的感覚で世界を相手にしてはいけない。これを肝に銘じなければ、歴史戦には絶対に勝てません。

けんと ぎるばーと 1952年、アメリカ、アイダホ州生まれ。70年にブリガムヤング大学に入学し、71年にモルモン宣教師として初来日。80年、同大学大学院を修了し、法学博士号・経営学修士号を取得。その後、国際法律事務所に就職し、法律コンサルタントとして再び来日。タレント業にも携わり、『世界まるごとHOWマッチ』などの番組に出演する。著書に『まだGHQの洗脳に縛られている日本人』(PHP研究所)など多数。