松田智生(三菱総合研究所主席研究員)

元気の出ない四字熟語ばかりで良いのか?


 「介護難民」、「消滅都市」、最近巷で見るのは元気のない四字熟語ばかりだ。確かに世界一の高齢率26%の日本では、こうした四字熟語が溢れるのも理解できる。今後、団塊の世代が75歳以上の後期高齢者となる「2025年問題」を控えるが、果たして超高齢社会はそんなに悲観的な社会なのだろうか?世界に先駆けて超高齢社会を迎えた日本は、世界に先駆けて課題を解決するチャンスにいるのだ。今求められているのはピンチをチャンスに変える逆転の発想だ。以下そのキーワードを示したい。

シニアは社会のコストでなく担い手
 まず高齢者(シニア)は社会のコストでなく担い手と考えることだ。日本では高齢者の約5人に1人が働いており、これはOECD加盟先進国の平均の約2倍だ。海外の観光客が日本で驚くのは、空港、タクシー、店舗で活き活き働くシニアだという。こんなにアクティブシニアで溢れる国はない。シルバー社会という言葉があるが、それはシルバーシートのように支えられる人のイメージだ。一方、プラチナは錆びない、輝きを失わない。今後目指すのはシニアがプラチナのように輝く社会だ。

多世代の視点
 高齢社会の誤解は何か?それは「高齢者のため」の社会だ。高齢社会は、本来は若年層、子育て層、ミドル層含めた多世代のための成熟した社会であり、シニアだけが幸福でなく、多世代が幸福になるべきだ。子育て支援や若年層の起業支援などシニアが多世代のために貢献できることは多々ある。

55分の50問題を解決せよ
 現在、医療費は40兆、介護給付費は10兆円、一方税収は55兆円である。手元に分子を40+10の50、分母を55と書いてみよう。50/55、これは平たく言えば、月収55万円の家庭が医療と介護に50万円使っているのと同じであり、こういう家庭は光熱費も食費も教育費も払うのは困難だ。だから借金するしかない。医療費と介護費はそれぞれ毎年1兆円上がっている。この55分の50問題を解決するにはどうすべきか? 分母の税収を上げて分子の医療介護費を抑制するしかない。分母の税収を上げるのは新たな産業創造である。戦後日本は、繊維、重化学、自動車など常に新たな産業を創りだしてきた。今度は新産業として、健康産業を創造する番だ。健康支援、予防医療といった超高齢社会の課題を解決する産業が雇用を生み、アクティブシニアの消費を生み、分母の税収を増やすのだ。

 一方、分子の医療費であるが、医療費は市町村では約3倍の差がある。健康支援、予防医療、社会参加が進んでいる市町村は医療費が改善され、介護も適切なケアやリハビリにより介護度や自立度が改善可能である。最良の事例に学べば、医療介護費の抑制は可能だ。

対処から予防の視点
 「増える介護者をどうするか?」これは対処の視点であり、結局、後手・後手に回ることになる。重要なのは「介護者を増やさないためにどうするか?」という先手を打った予防の視点だ。いわゆる2・6・2の法則で言えば、上位の2割はアクティブ層、下位2割は病気・介護・困窮の対処層であるが、問題は中間層の6割だ。中間層が上位のアクティブ層に向かうか、下位の対処層に向かうかの分水嶺に今いるが、中間層を上に向かわせる予防策が重要なのだ。