潮匡人(評論家、元3等陸佐)


 甘利明・経済再生担当相が28日の会見で認めた通り、政治家というのは「脇が甘く」なればこうなるということです。甘利さんにすれば嵌められたという見方になるのかもしれないが、はっきり言って騙された方も悪い。それは戦争も軍隊も政治も同じ。そんな言い訳がまかり通るなら、これまでだって誰も大臣を辞める必要なんてなかった。もし、秘書のせいにしていたら一昨年、約3億円の虚偽記載で元秘書2人が有罪となって辞任した小渕優子さんとの違いは何だ、ということになる。甘利さんにはもはや、辞任以外の結論はなかった。

 でも、「悪意」のある人が政治家を貶める目的で献金し、それをネタにしてマスコミに売り込んだスキャンダルが発覚すれば、必ず大臣を辞めなければいけないということになると、政治家はすべての献金者の素性を調べてからでないと、政治資金を受け取れないということになる。当たり前の話だが、すべての献金者の身元を調べるなんてことは、国会議員の事務所や政治家秘書の能力をはるかに超えていることで、事実上不可能です。ということは安倍総理であれ、嵌めようと思えばいつでも嵌められるっていうことです。
記者会見で閣僚辞任の意向を表明し、涙ぐむ甘利経済再生相=28日夕方、内閣府
 甘利さんは政治資金報告書に後日記載したとはいえ、大臣室と事務室でそれぞれ50万円ずつ直接もらっている。秘書が500万円もらって200万円しか申告せず、残りの300万円は全部遊興費に使ったということですから、普通なら収賄罪が成立します。少なくとも、500万円のケースについては政治資金規正法が守られていなかったわけですから、たとえ秘書が単独でやったにせよ、議員の責任が問われるのは当然のことです。こうなると、甘利さんが辞任しない限り、国会の審議も始まりませんし、参院選の日程も組めなくなる。6月1日までに通常国会が終わらなければ、国政運営は大変なことになる。結論は初めから甘利さんを本気で続投させるのか、やめていただくかの二つに一つしかなかった。

 ただ、『週刊文春』の記事を読んだ人は誰もがおかしいと感じたと思いますが、なぜ甘利さんの会話が録音され、隠しカメラで撮られていたのか。政治家が何か悪いことをしたのがバレて、正義の『週刊文春』がスクープしたという構図とは全然違うことは誰でも分かる。どうしても、金を渡し文春にネタを売った告発した人物の側にきな臭さを感じる。『週刊文春』にしてみれば、大臣の首一つ取ったわけですから、週刊誌ジャーナリズムとしては「金星」です。ただ、問題なのはそれで今後こういうことが起きないのか? いや、きっとまた起きるでしょうという。与野党を問わず小選挙区の厳しい選挙を勝ち上がらなければならない国会議員にとって、同様な手法で「悪意」のある人がアクセスしてきたら、我が身を守るのは非常に難しいだろうということが、今回すべての政治家が学ぶべき教訓とも言えます。

 実を言うと、私も2010年12月から2011年6月まで、宇都隆史参院議員の政策秘書を務めた経験がありますが、国会議員の周りに群がってくるのはすごく「変な人」が多いんです。まともな人や常識のある人は頻繁に事務所に来たりしません。議員会館の中を意味もなくうろうろする「政治ゴロ」と呼ばれる人たちがいる。おいしい話があれば、ガンガン食い込んでいって飯を食っているような連中がいっぱいいて、大体が筋の悪い人たちです。そういう人であっても、小選挙区を抱える国会議員は地元の選挙民だったら「胡散臭いやつだなあ…」と思いながらも、とりあえず大臣室に入れざるを得ないのが実情なんです。