高橋暁子(ITジャーナリスト)

 「忘れられる権利」をご存じだろうか。「忘れられる権利」とは、端的には、インターネット上の個人情報を検索結果から削除する権利のことを指す。2014年5月のEUの最高裁判所に当たる欧州司法裁判所が、Googleに対して個人名の検索結果から個人情報が含まれるリンクを削除する判決を言い渡している。

 Googleの「透明性レポート」によると、削除依頼リクエストを処理し始めた2014年5月29日以来、削除のために評価した欧州におけるURLは129万8344件、受け取ったリクエスト総数は36万6959件(執筆時点)。このうち削除されたURLは42.3%であり、削除されなかったURLは57.7%となる。削除依頼は個別に評価する必要があり、公共に益する場合は削除しなくても良い仕組みだ。

 ただし注意が必要なのは、あくまで検索サイトでの検索結果から個人情報を削除できるのみで、ウェブページから該当する情報を削除できるわけではないということだ。なお、日本においては、2014年10月にGoogleが東京地方裁判所に検索結果の削除を命じる仮処分命令を発令している。

 「忘れられる権利」はなぜ必要なのだろうか。10代20代の若者たちの実態から、考えていきたい。

消えない過去に苦しめられる若者たち


 近年、未成年が若気のいたりで露出が高い写真や不適切な投稿をする例が増えている。インターネット上にそのような写真や投稿をすると、自分の評判を傷つけ、就職や結婚の際に非常に不利な立場に立たされることになる。米国では、そのような若者を救済するための法律が誕生しているのをご存じだろうか。

 米カリフォルニア州では、2013年9月に未成年が希望した場合に自分の過去の記録を削除できる、通称「消しゴム法(Online Eraser Law)」が州知事の署名を受けて承認されている。同法は、FacebookやTwitterなどのソーシャルメディア大手に義務づけられており、2015年1月1日に施行されている。早速FacebookやTwitterは同法に対応したサービスを提供している。

 検索結果によって苦しめられている若者は多い。たとえば次のような例が起きた。2013年、某飲食店のアルバイトA君は、冷蔵庫に入り込んだ写真をTwitterに投稿。A君の本名や在籍校などがすぐに突き止められ、炎上する騒ぎとなった。その結果店舗は休業、A君は解雇され、損害賠償請求される羽目になってしまった。A君はショックで引きこもり状態となったと言われている。

 炎上事件を起こすと、“特定班”などと呼ばれるネットの住人たちによって個人を特定されてしまう。そして、本名や顔写真、在籍校、住所や家族などの個人情報をインターネット上に公開されてしまう。その結果、名前で検索すると炎上事件と個人情報が表示される羽目になる。事件から2年半経った現在も、A君の本名で検索すると炎上事件やA君の個人情報が表示されている。