中野ジロー(作家・ジャーナリスト、元暴走族幹部)


 覚せい剤取締法違反容疑で逮捕された元プロ野球選手の清原和博容疑者については、以前から薬物疑惑が駆け巡っていましたよね。警視庁が清原さんの内偵に入っていると私も1年ぐらい前に耳にしました。平成21年にのりぴー(酒井法子)が、その後タレントの小向美奈子さん、歌手のASKAさんが相次いで逮捕され、芸能界の薬物汚染が一際問題視されましたが、その頃から何も変わっていない。

覚せい剤所持で逮捕された元プロ野球選手・清原和博容疑者の自宅マンション。携帯電話で写真を撮る人の姿も=2月3日、東京都港区東麻布
覚せい剤所持で逮捕された元プロ野球選手・
清原和博容疑者の自宅マンション。携帯電話
で写真を撮る人の姿も=2月3日、東京都港区東麻布
 清原さんがなぜ薬物に手をだしたのか。「番長」と呼ばれる一見いかつい風貌とは違って、清原さんは本当は弱かった。悪い意味での「有名税」というか、悪意をもって近づいてくる人も多かったでしょう。そんな環境で実際に気が弱い人間は、薬物にも弱いものです。どうしても軽い気持ちでああいうものに手を出してしまうんです。それは「自分はやっぱりつかまらない」という根拠のない自信があるからです。清原さんはPL学園高校時代からのスーパースターでうぬぼれも当然あったんだろうと思います。

 一昨年5月に「CHAGE and ASKA」のASKAが覚せい剤取締法違反(所持)容疑で逮捕(懲役3年、執行猶予4年)されましたが、落ち目になってテレビから見なくなるとこういうことが起きますよね。清原さんも一時はテレビから姿を消し、徐々に芸能活動を再開させた矢先の逮捕になりました。一時テレビのコメンテーターをやって降ろされたことがありましたが、その頃から薬物との関係があったのかもしれません。

 プロ野球選手や格闘家、芸能人などの薬物事件は、今後もなくならない。今年に入ってNHKのアナウンサーが危険ドラッグ所持で逮捕されましたが、タレントだけでなく社員に対しても、テレビ局は薬物事案にかなり慎重になっています。山口組の分裂抗争が始まって以来、薬物の密売を働く暴力団でも、手をひく者が増えていると聞いているけど、そんなことはないんじゃないか。暴力団のシノギって今も薬物しかないんですから。

 薬物を最初に覚えるのは外国に行ったときが多い。コカインにしても大麻にしても国内より入手しやすく手にする機会が頻繁にあります。1992年に他界した尾崎豊さんも学生のときに海外で覚えたといわれ、亡くなった事件では、薬物を売った人間が、尾崎さんにナフタリン等が入った薬物を渡し裸で暴れたといううわさが流れたことがありました。

 「一度ハマると抜けられない」といわれている覚せい剤に手を染めてしまうと抜け出すのは大変です。現在、私は覚せい剤違法薬物撲滅運動家として薬物をやめたい人の相談に応じていますが、そんな私に「薬買うやつ紹介してくれ」と言ってくる組員もいるくらいです。薬物はどこでもある。薬物を断つには人間関係を含めた自分の周りとの関係を断つことが一番大切なんですが、それがいかに難しいことか。ただ、のりピーは大崎のジムがサポートして、今では完全に覚せい剤から立ち直ったと聞いていますよ。(聞き手、iRONNA編集部・溝川好男)



なかの・じろー 1967年生まれ、東京都出身。 元暴走族中野ブラックエンぺラーのリーダー。19歳ごろ、某任侠団体組織に加入し、組幹部になる。現役ヤクザ時代は、東京拘置所を皮切りに通算17年に及ぶ服役を経験。裏社会にまつわる記事を書き始める。現在は完全にヤクザから足を洗い、ジャーナリスト、芸人、バンドなど多方面で活動している。 著書に『刑務所ぐらし』『刑務所の奇人変人』(道出版)、『歌舞伎町チンピラのココロエ』(第三書館)など。